原油高である。ガソリン代はレギュラーで170円/リットルを超え,200円時代もそう遠くないだろう。2008年5月にはガソリン代を節約する商品を宣伝する迷惑メール(スパム)が急増したという笑えない話もある(関連記事)。

 膨れ上がったオイルマネーが政府系ファンド(SWF)に流れ込み,資源や穀物などの一次産品から,情報通信や医療などの高度先端技術に至るまで,あらゆるものに投資されている。原油のあるうちにオイルマネーを元手にして投資技術を磨き,さらに国の資力を高めようというのがアラブ各国の戦略だ。

 2007年秋には,アブダビ首長国の投資会社がコスモ石油に900億円を出資し,筆頭株主になった。また,サブプライムローン問題で大きな損失を被った米シティグループに出資して救済したのも,アブダビ投資庁やクウェート投資庁などのSWFだった。先ごろは,神戸市の医療特区に設立される高度医療の専門病院に,アブダビのSWFが100億円規模の投資をするというので大いに話題になった。

低迷する日本の太陽光発電市場

 「エネルギーを制するものが世界を制す」。アラブ世界をはじめとする産油国はしばらくわが世の春を謳歌することだろう。それに比べて日本のエネルギー事情はどうか。相変わらず,エネルギー自給率は2割に届かず,原油や天然ガスを大量に輸入してばんばん燃やし,火力発電のタービンを回している。環境にも悪ければ,燃料コストも上がる一方で,まさにお先真っ暗という有様である。

 そもそも日本政府は2000年前後に新エネルギー政策を打ち出し,「風力や太陽光などの自然エネルギーで国内総発電量の1割をまかなう」という壮大な目標を掲げて,普及促進に乗り出したはずである。「石油依存からの脱却,エネルギーの自給自足」という夢はどうなってしまったのか。

 6月9日に発表された日本の地球温暖化政策の基本方針「福田ビジョン」では,2050年に温室効果ガスを60~80%削減という長期目標の実現に向け,その具体策の一つとして太陽光発電の大量導入を打ち出した。2020年までに現状の10倍,2030年には40倍に導入量を引き上げることを目標とする。これを実現するには,電気事業者が世界最大級の大規模太陽光発電所を全国に設置することに加え,新築持ち家住宅の7割以上が太陽光発電を装備しなければならない。

 だがここ数年,住宅用や産業用の太陽光発電の導入件数は大きく落ち込んでいる(図1)。この傾向からすれば,よほど強力なインセンティブがなければ,政府の目標は到底達成できないと言わざるを得ない。

図1●日本国内における住宅用太陽光発電の導入件数とkWあたり装置価格の推移(出典:太陽光発電協会資料)
図1●日本国内における住宅用太陽光発電の導入件数とkWあたり装置価格の推移(出典:太陽光発電協会資料)