Take1:
MicrosoftとYahoo!の交渉がまたもや決裂

 これが昼メロのシナリオなら,ありそうもない現実味に欠ける話だ。米Microsoftの米Yahoo!に対する気まぐれなロマンスは,またもや破れ,二度と復活はなさそうだ。

 ドラマの流れは2008年6月12日(米国時間)の夜,急転回した。Yahoo!が「Microsoftからの新たな提案を熟慮したうえで,提案受け入れは最大の利益をもたらす選択肢でないと判断し,交渉を打ち切った」と発表したのだ(関連記事:Yahoo!とMicrosoftの交渉打ち切り,「全社的または部分的買収は無い」)。

 Yahoo!によると,MicrosoftはYahoo!の検索事業を買収することと,残るYahoo!株式の16%を1株当たり35ドルで買い取ることを提案したという。これに対し,Yahoo!は「検索事業は当社の長期的な成功に欠かせない要素と考えているため,提案を拒否した」としている。

 この記事が掲載されるころ,どちらの選択が妥当といえる状況になっているだろうか。

Take2:
高慢な恋人Yahoo!,Googleの腕のなかへ

 Yahoo!は,Microsoftのもとを突如飛び出してからわずか数時間後,2番目の発表をした。検索事業の一部を業界大手の米Googleに外部委託するというのだ(関連記事:Yahoo!がGoogleのオンライン広告を採用へ,非排他的提携で合意)。

 これからの展開は手に取るように分かる。Yahoo!は,検索事業を同社の中核事業と位置付けているのに,なぜ最大のライバルに外注するのだろうか。Yahoo!の株価は予想通り23ドル台に急落し,Microsoftが最初の買収提案をした直後の安値に近づいた。

 Yahoo!はもう舞台から消えてしまったのだ(これが昼メロでなく3次元ホラー映画なら,同じように消滅してしまった米Netscape Communicationsのロゴか何かが目の前で揺れ動き,お開きとなるタイミングだろう)。

Take3:
止まらないYahoo!からの人材流出

 Yahoo!の指導力を発揮できない経営陣,株価低迷,株主による訴訟,投資家Carl Icahn氏と繰り広げている争いは,いずれも「Yahoo!が深刻な状況に陥っていることの現れ」とみなしても間違いではないだろう。さらに,この苦境にあるインターネット界のパイオニアが問題を抱えていることは,ほかの証拠からも見ても明らかだ。

 最も深刻な事態は,頭脳流出と幹部の脱出が止まらないことである。この流れは6月第2週になって悪化した。上級副社長のJeff Weiner氏と最高データ責任者(CDO)のUsama Fayyad氏がそれぞれ個別に,Yahoo!という沈みかけの船から距離を置くと発表したのだ。1999年の入社以来Yahoo!を離れなかったJeremy Zawodny氏も,船から下りる。

 ただし,Zawodny氏は自身のブログで「自分の退社とYahoo!が現在抱えているトラブルとは無関係」とし,「もっと魅力的なあること」の影響が大きいとした。おそらく,ドラマ的要素に欠けるものの将来のある企業に転職するのだろう。もっとも,筆者は少し深読みしすぎているかもしれない。