消費電力を抑える技術は,単体のサーバーに対するものだけではない。複数のサーバーや複数のストレージを効率よく運用することで,全体の消費電力を抑える技術も,検討や導入が始まっている。

 複数のサーバーを運用している場合に,全体の消費電力を抑制できる切り札として注目を集めているのが,サーバーの仮想化技術だ(図7左)。サーバーを仮想化して,プロセッサやメモリーを複数のアプリケーションで共有すれば,物理サーバーの稼働台数を減らせる。アプリケーションごとのリソース使用率に応じて,必要なプロセッサやメモリーを動的に割り当てることができるので,余った物理サーバーの電源を切れば消費電力を抑えられる。

図7●サーバーやストレージは構築・運用方法でも消費電力が変わる
図7●サーバーやストレージは構築・運用方法でも消費電力が変わる
要素技術は既に登場しているが,2009年以降,ミドルウエアやアプリケーションと連携させて自動制御する仕組みが登場する
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 ストレージの分野では,MAID(Massive Arrays of Inactive Disks)と呼ぶ技術がある(図7右)。ストレージ装置内部のディスクを必要に応じて停止させる技術である。もともとディスクは一様に動くわけではない。ディスク・アクセスが頻繁にあるデータもあれば,ほとんど必要としないデータもある。そこで,「常時円板を回転させる」「読み書きのときのみ円板を回転させる」「円板を停止させる」といったデータの読み書きの頻度に合わせて,ディスクをグループ化して管理する。バックアップやリストアのときにしかアクセスしない場合,円板の回転を止めることで,消費電力を抑えられる。日立製作所のストレージでは最大で40%の消費電力を削減できるという。

 サーバーの仮想化技術とストレージのMAIDを使った省電力化は今のところ,運用担当者が手作業で実施する必要がある。ミドルウエアと連携して自動的に電力を調整できる製品が出始めるのは,2009年以降になる見込みだ。

データセンターの空調も見直し

 サーバーを管理しているマシン・ルームの空調も,電力削減の対象になる。「サーバーなどのIT機器を含めたマシン・ルーム全体の消費電力のうち,半分近くは空調機が占めている」と富士通の増田敦志氏(サービスビジネス本部 建築・環境ソリューションビジネス推進部 部長)は指摘する。

 最近のマシン・ルームでは,空調機から出てくる冷たい空気が床下を通り,サーバーのラックの間の床から立ち上るようになっている。このとき,床下の空気の通り道を,サーバーの電源ケーブルやネットワーク・ケーブルが遮るようだと,冷たい空気がサーバーに届きづらくなり,サーバー・ルームを冷やすのに多くの電力が必要となる。床下の空気の流れと並行にケーブルを取り回すだけでも,消費電力を抑えられる効果があるという。

 また,冷えた空気を当てる位置も工夫の余地がある。ラック型サーバーの前面と後面の両方に,冷たい空気を当てるのは効率が悪い。ラック型サーバーは,サーバーの前面から冷たい空気を取り込んで,サーバー内の熱を持った空気を背面から逃がす。サーバーの後面に冷たい空気を当てても,サーバーは冷やされないのだ。「サーバーの前面だけに冷たい空気を供給して後面からの排気を出しやすくするように空気の流れを変えるだけで,空調機の消費電力を20%ほど減らすことができたケースもある」と増田氏は話す。