プロセッサの省電力技術は,主に三つ。クロック周波数や電圧の抑制,回路への電力供給ストップ,リーク電流(漏れ電流)の抑制だ。

 クロック周波数が高くなると,回路内を流れる電流の量が増える。プロセッサの内部では,クロック周波数に応じて(1GHzなら10億回/秒),充電と放電を繰り返しているからだ。軽い処理のときにクロック周波数を落とせば,電力を節約できる(図2左上)。マルチコア・プロセッサでは,コア(演算器や1次キャッシュを格納するプロセッサの中核)ごとに周波数を設定できるようになっている(図2右上)。

図2●プロセッサの消費電力を削減する技術
図2●プロセッサの消費電力を削減する技術
[画像のクリックで拡大表示]

 コアの内部では,利用していない回路に対するクロックの供給を止める。プロセッサはクロックの信号に合わせて動作するため,信号が来なければ電力を消費しない(図2左下)。

 リーク電流への対策も進んでいる。最先端のプロセッサでは,トランジスタをつなぐ配線の幅(製造プロセス)が45nmまで微細になり,そこから漏れる電流(リーク電流)が無視できなくなっている。「ゲート」と呼ぶ部分の絶縁膜の素材を,従来の二酸化ケイ素から高誘電率(High-k)の物質に変更することで対処する(図2右下)。インテルが2007年に出荷した製品では,リーク電流を10分の1に抑制した。

メモリー:電圧を抑制

 メモリーも,クロック周波数と電圧によって消費電力が変わる。ただし,メモリーは自律的に周波数をコントロールできないため,電圧を下げることで消費電力を抑える。

 半導体部品の標準化団体であるJEDECが,メモリーの電圧の規格を定めている。2002年ころから普及していたメモリーの規格(DDR1)は電圧が2.5Vだったが,現在普及しているメモリーの規格(DDR2)の電圧は,1.8Vに下げられている(図3左)。これによりエルピーダメモリの製品では,1.8Vで動くメモリーでデータ転送する際の消費電力を,2.5Vで動くメモリーの半分に削減できた。

図3●メモリーの消費電力を削減する技術
図3●メモリーの消費電力を削減する技術
[画像のクリックで拡大表示]

 メモリー内部で電力供給を止める技術もある。データの読み書きなどの処理が行われていないときに,メモリー内部の回路部分への電力の供給を一時的に停止するのである(図3右)。