設定を変更することだけが性能向上の手段ではありません。カーネルを最新版に変更するのも有効な手段の1つです。最新カーネル導入時の設定に費やす時間とコンパイル時間をチューニングする方法を紹介します。

 カーネルは,多くの開発者が日々改良しています。そのため,最新のカーネルを用いることで,性能向上が期待できる場合があります。そういう意味で,『最新カーネルを用いる』もカーネル・チューニングの有効なテクニックの一つです。しかしカーネルのコンパイルは簡単ではない上,多大な時間を要します。そこで本Partでは,コンパイルの設定に費やす時間およびコンパイル時間を短縮するテクニックを紹介します。

 最新カーネルは「The Linux Kernel Archives」(http://www.kernel.org/)というサイトから入手できます。「The latest stable version of the Linux kernel is:」行の「F」リンクをクリックするとダウンロードできます。

 入手したカーネルは,bzip2形式で圧縮されたソース・コードです。よって,コンパイルして導入するには図1の手順を踏むことになります。導入時に大きな障害となるのが「カーネル・パラメータの設定に手間がかかること」と「コンパイル時間が長いこと」です。

図1●カーネルのインストール手順
図1●カーネルのインストール手順
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 カーネルには,CPUやメモリー,ファイル・システム,ネットワーク,周辺デバイスなどを制御・管理する設定が,「カーネル・パラメータ」として100以上用意されています。写真1のグラフィカルな設定ツールが用意されていますが,自分が使用するシステム環境に合わせ,多くのパラメータを1つずつ設定するのは大変な作業です。

写真1●カーネル・パラメータの設定ツール
写真1●カーネル・パラメータの設定ツール

 さらに設定を大変な作業にしている要因があります。個々のパラメータ同士が関係し合う依存関係です。依存関係は,あるパラメータを有効にしないと,別のパラメータが設定できないことを示すもので,カーネル・パラメータの多くがこの依存関係に影響されます。作業時には依存関係を解決し,速やかにカーネル・パラメータの設定を済ませたいところです。

 一方,コンパイルはコマンドこそ簡単なものの,かなりの時間を要します。最新カーネルを早く試したいユーザーにとっては,この時間は苦痛になります。できるだけ短時間で,コンパイルを実行したいものです。