HDDに適用されている省電力技術は,プロセッサやメモリーとは考え方が異なる。HDDは,記憶媒体である円板上の一定面積に書き込める記憶容量(面密度と呼ぶ)が2~3年ごとに2倍に増加していることを利用して,消費電力を抑えている。

 面密度が高くなれば,必要な円板の枚数を減らしたり,円板の直径を小さくしたりできる。それにより,円板を回すモーターの負荷が減り,消費電力を下げられるというわけだ。

 あるメーカーの製品では,円板の数を5枚から2枚に減らして消費電力を40%削減した(図4左上)。また,円板の直径を3.5インチから2.5インチにすることで消費電力をほぼ半減させた(図4左下)。

図4●HDDの消費電力を削減する技術
図4●HDDの消費電力を削減する技術
日立グローバル ストレージテクノロジーズのデータを示した
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 動作状態によって,電力供給を一時的にストップする技術もある。例えば,スタンバイ中は円板を動かす必要がないので,コイルやモーターへの電力供給を止めるのである(図4右)。

電源装置,ファン:回しすぎない

 電源装置やファンの消費電力は,サーバーが消費する電力の半分近くを占める。それだけに,節約できればそのインパクトは大きい。

 電源装置は,外部から取り込んだ交流電流を直流電流に変換する。その際,電力の一部が熱として逃げてしまう。コンバータなどの部品を改良することでそうした電力ロスを削減する(図5上)。

図5●電源やファンの消費電力を削減する技術
図5●電源やファンの消費電力を削減する技術
HP BladeSystem c-Classの例を示した
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 ファンは,サーバー内部が十分冷却されているときには回転数を下げることで,必要以上に回転させないようにする。複数のファンを複数のブレードで共有して使うブレードサーバーは,各ブレードの温度をセンサーで検知して,ファンの回転数をコントロールする(図5下)。

 ファンの回転数を抑えるのに有効な,プロセッサの冷却技術の研究も進んでいる。日立製作所では,プロセッサで発生する熱を逃がしやすくする部品であるヒートシンクの材質をアルミニウムから,より熱を伝えやすい銅に変えることで,ファンの消費電力を43%削減できたという(図6上)。

図6●冷却技術の採用による消費電力の削減
図6●冷却技術の採用による消費電力の削減
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 さらに,液体が気化するときに周囲から奪う気化熱を使って,サーバーの外へ効率よく熱を排出する技術もある(図6下)。富士通が実用化した「ヒートパイプ」や,日立製作所が開発している冷却液を空洞に閉じ込めたヒートシンクがそれに当たる。