サーバーの省電力技術が注目される背景は二つある。

 一つは,電力コストの問題だ。大手調査会社 米IDCの調査によれば,データセンターでは電力にかかるコストの伸びが,サーバーやファシリティを含む装置コストの伸びを既に大きく上回っている。

 もう一つは,電力が性能向上のボトルネックになってきたことだ。プロセッサを例に挙げると,クロック周波数を限界まで上げるとその発熱は100℃を超えることもあり,安定稼働が難しくなる。発熱を抑えるには,効率的な冷却機構を開発すると同時に,発熱のもととなる消費電力を削減しなければならないのだ。

 もちろん,ここへ来て急にサーバーの省電力技術が進化し始めたわけではない。サーバーの性能向上の歴史は,省電力技術の地道な積み重ねの歴史でもある。

 まずは,省電力技術の基本的な考えを理解しよう。サーバーに供給される電源は直流なので,消費電力は電流と電圧の積になる。

電力(W)=電流(A)×電圧(V)

 つまり,サーバーに供給される電流や電圧を下げたり,止めたりすることで,消費電力を抑えられる。要は「動作に必要な電力を減らす」「動作していない部品への電力供給を止める」という二つが,サーバーの省電力技術のポイントである。この二つを,サーバーを構成する部品それぞれに組み込めばよいのである。

 サーバーを構成する部品は多いが,電力を大量に消費する部品は限られる。プロセッサやメモリー,ハードディスク・ドライブ(HDD),電源,ファンなどである(図1)。次回からは,部品ごとに省電力を実現する技術を詳しく見ていこう。

図1●サーバーの消費電力の内訳と抑制方法
図1●サーバーの消費電力の内訳と抑制方法
内訳は日本ヒューレット・パッカードが自社製品を対象に調査した結果の平均値
[画像のクリックで拡大表示]