筆者は米Microsoftに対して,「Windows Vista」に関する否定的な見解が増える一方という状況を打開すべきだと,何カ月も前から忠告し続けてきた。ところが,これまで同社は臨時に白書を発行して「すべて好調」という内容の調査結果と販売実績を示しただけの,中途半端な対応しかとっていない(関連記事:Microsoft,企業に「Windows Vista」移行を説得)。

 米Appleの「Switcher」広告,何もわかっていない技術通やブロガーの存在,「Windows Vistaは単なる失敗作」という認識の広がりは,最終的にMicrosoftまで影響を及ぼす可能性がある。というのは,米Sanford C. Bernsteinのアナリストが2008年6月第2週,Microsoftの2008会計年度(2007年7月~2008年6月期)と2009会計年度(2008年7月~2009年6月期)の業績予測を下方修正したのだ。その理由はWindows Vistaである。

 Sanford C. Bernsteinの報告書には「Windows Vistaの採用状況は,企業の規模や分野にかかわらず悲惨な状況が続いている」とある。「その結果,Windows Vistaによる波及効果は,以前の予測よりも相当小さくなりそうな見通しだ」(報告書)。

 Sanford C. Bernsteinのアナリストらは,Microsoftの売上高の予測値を2008会計年度について4900万ドル,2009会計年度について3億9500万ドル下げた。Microsoftの規模からすれば,この程度の下げ幅は大きな数字でない。ただし,以前2.20ドルだった1株当たり利益の予測値は今回2.17ドルになり,問題視されるはずだ。

 報告書は,Windows Vistaの「圧倒的な悪評」が原因であるとした。事実と異なる悪評であるものの,家庭と企業の両ユーザーが抱く見解の方向性を決めていることは間違いない。事実,筆者は友人や知人からパソコンの新規購入についてよく相談されるが,驚くほど頻繁に「Windows Vistaの『できの悪さ』はよく知っているから,Windows Vistaの購入を避けるか,少なくともトラブルを緩和するための方法を教えてほしい」と聞かされる。

 この問題は純粋に感覚的なもので,アナリストらは報告書のある部分で「新OSの機能が導入の推進剤とみなされることは,今どきほとんどない」と指摘した。問題を悪化させている要因がもう一つある。Windows Vistaは,Windowsのメジャー・アップグレードに相当するバージョンであり,一般的にパソコンの新規購入が必要なのだ。過去20年間で最も景気が低迷しているまっただ中で,余計な出費を増やしてしまう。

 Sanford C. Bernsteinは,MicrosoftがWindows Vistaの後継OS「Windows 7」(開発コード名)を今から約2年後の2010年第2四半期にリリースするとみている。そしてMicrosoftにとってありがたいことに,この2年のあいだ「Microsoftは従来タイプの競合他社との争いを優位に進められる位置におり,新たに登場するライバルとも十分な戦いが展開できる状況にある」と予想した。Sanford C. Bernsteinは,Microsoftの不振がWindows 7発売のころ底を打つと見込み,2010会計年度(2009年7月~2010年6月期)の売上高予測を4億2900万ドル上方修正した。