昨年来,筆者は「青少年とインターネット」や「青少年と携帯電話」という文字列に敏感になっている。自分の子供が小学校の高学年になり,まさにインターネットと携帯電話を使い始めたからだ。

 現在は,自分なりのやり方で子供に“使い方”を教え込んでいるところだ。巷間ニュースになるように様々な危険が潜んでいるからといって,臭いものにふたをしても問題からの逃避にしかならないという考えが根幹にある。水泳にたとえるなら,危険があるから子供を水に入れないと,おぼれることはないがいつまでも泳ぎ方は身につかない。自分がもはやインターネットや携帯電話のない生活に戻れない以上,自分の子供にこれらの道具を安全かつ安心に使う教育を施すことの方が大切だと考えた。

 ただそうはいっても,不安がないわけではない。現時点ではインターネットや携帯電話の利用について,知識や経験で子供を上回っている自負があるが,やがて子供の成長とともにその自信は揺らぐだろう。かつて自分が電子機器の利用について親の能力を上回っていったのと同じことが,いずれやってくるに違いない。しかも子供たちの世代は,生まれたときから既に携帯電話もパソコンも利用できる環境で育ってきた。彼らの世代が編み出す新しいアイデアや使い方に追従できるのかという不安がある。

 こうした背景もあって筆者は,インターネット上の有害サイトへのアクセス規制(フィルタリング)にかかわる情報を見守ってきた。親に代わって国が青少年のインターネットの使い方を制度化することになりかねないからだ。

 2007年12月に総務省が,未成年を対象にフィルタリング・サービスへの親権者の意思確認と加入推奨を携帯電話/PHS事業者に要請したことを皮切りに,議論が繰り広げられてきた。そして2008年6月11日には,議員立法による「青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律案」(有害サイト規制法案)が参議院本会議で可決され,成立した。この法案によって,例えば携帯電話/PHS事業者は,未成年の保護者からの申し出がない限りは,未成年にはフィルタリングの適用を条件としてインターネット接続サービスを提供することなどが定められた。

 筆者はフィルタリングそのものについて懐疑的なスタンスだ。まず運用そのものに困難さが付きまとう。世界とつながったインターネット上にある有害情報から青少年を遮断することは結局のところ難しく,拙速なまま走り出すと運用が困難を極めると考える。フィルタリングの仕組みをかぶせると認定などの手続きにコストや時間がかかり,新たなビジネスを開拓しようとする新興企業の勢いを削いでしまいかねないという危惧もある。

 そこで日経コミュニケーションでは,モバイル・サイトの健全性を認定する第三者機関として2008年4月に発足した「中間法人モバイルコンテンツ審査・運用監視機構」(EMA)事務局の岸原孝昌氏に,セミナーの壇上でフィルタリングにかかわる最新の動向やEMAのスタンスなどを聞くことにした。EMAは青少年の保護育成を目的に,第三者機関として,広告掲載の基準や有害情報の検知・削除に関する運営体制など,携帯電話/PHSサイトの健全性を審査・認定する。EMAが認定したサイトは,携帯電話/PHS事業者がフィルタリング・サービスを提供する際に反映されることになるだろう。

 セミナーは「モバイル・ビジネスの未来を見通す~ネット融合で始まる新モバイル時代」というタイトルで7月4日に開催する。この中の「真相に迫る 急浮上したコンテンツ規制」というセッションを,筆者からの質問に岸原氏が答えるというスタイルにした。セッションをすべて岸原氏のプレゼンテーションにする案も考えたが,フィルタリングを巡って様々な意見がある今だからこそ,問題点を整理し,いくつかの疑問に答えてもらうスタイルが分かりやすくなると考えた。

 旬の話題であり人によって考え方が異なるものだけに,筆者としても質問が片寄らないよう頭を悩ませている。そこでITproの読者の方々に,この場を使ってEMAに聞きたい質問のアイデアを募集することにした。この問題に興味がある方は本記事の下にあるコメント欄(記事下の「コメントを書く」をクリックするとアクセスできます)から,質問を書き込んでいただきたい。これらを当日までに集約し,セッションに使うつもりだ。

 ただしあらかじめお断りしておくが,時間の制約のため,複数の方からいただいた質問の趣旨を集約する場合があること,そしていただいた質問のすべてに対応できない場合があることはお許しいただきたい。なおコメント欄に書いていただいた文章は,ページ内の「このコメントを公開してもよい」をクリックしなければネット上に公開されることはない。読者の皆様の疑問をぜひお寄せいただきたい。