マネジメント層が知りたい情報は,プロジェクトの全体感やQCD(品質・コスト・進捗)の予実績をコンパクトにしたものだ。客観的にプロジェクト状況をレポーティングすることが求められる。常にプロジェクトを俯瞰しているPMOの出番である。

川上愛二
マネジメントソリューションズ マネージャー


 マネジメント層への報告(マネジメント・レポート)にかけられる時間は限られています。皆さんもご存知の通り,マネジメント層は複数プロジェクトを抱えていますし,社内作業も多数持っているので非常に多忙です。いざ報告会議を始めても,主要メンバーのスケジュールによっては途中で中断される事態も多々あります。せっかく気合いを入れて,たくさんの資料を用意しても,使わずじまいになったりします。

 「マネジメント層への報告は要点を絞れ」とはよく言われますが,今一度整理してみると,以下のようなポイントが挙げられると思います。

(1)結論から報告する。
(2)概要資料と詳細資料を作成する。マネジメント層から突っ込まれたときに,詳細資料で補足できるようにする。
(3)定量情報,シグナル(○,△,×)をうまく使う。
(4)情報を圧縮し,マネジメント層が理解できる言葉に翻訳して,コンパクトに報告する。

 限られた時間の中でマネジメント層に簡潔な状況説明を行い,意思決定してもらう必要があります。だらだらと記述した資料では,目を通してもらえない可能性があります。

 それゆえ,資料の最初に「一番伝えたいこと」を持ってくるべきです。定量的に情報を伝えるとインパクトがあります。マネジメント層の記憶にも残るでしょう。フェーズ完了報告会議,出荷判定会議などでは,シグナルを有効に使うことで興味を引けると思います。

「結論だけの報告」は報告にあらず

 結論をコンパクトに報告することは重要ですが,だからといって結論に至るまでの「検討経緯」を端折ってはいけません。マネジメント層はまず結論を知りたがりますが,それに至るまでの検討経緯にも注目しています。現場を離れたマネジメント層の多くは詳細内容を理解できなくなっていますが,「結論に至るまでの論理に綻びがないか」「リスクがないか」という視点で見ています。そうした要望にこたえられる説明を心掛けるべきです。

 報告の内容面では,以下のポイントを忘れずに記載する必要があります。それぞれの点について,順を追って説明していきましょう。

◆前回報告からの変更点(前回指摘を受けた部分への対応結果など)

 マネジメント層は前回報告した内容をきちんと記憶しています。特に自分が質問した点や宿題としてプロジェクトが持ち帰ったものについては覚えているものです。まずは,前回報告からの変化点や指摘を受けた部分についての対応結果を報告する必要があります。

◆QCD予実績,今後の見通し(要員投入計画など)
◆重大課題,リスクのエスカレーション

 進捗状況についても,キーとなるマイルストーンの遅れについて報告し,QCDへの影響,リカバリ・プランなどを伝える必要があります。課題,リスクについては,マネジメントの判断が必要なものをピックアップし,エスカレーションします。

 ここでも,マネジメント層に決裁してもらうためには,そもそもの課題のゴール,検討経緯(判断に至ったオプション比較案など)を提示する必要があります。プロジェクトメンバーがどこまで全体感を持って,深く検討しているかがチェックされるでしょう(第40回 「検討経緯が残っていない」というリスク)。

◆マネジメント層への依頼

 報告に盛り込むべきマネジメント層への依頼事項は,多岐にわたります。具体的には次のような事項が挙げられます。

  • トップダウンによるユーザーの巻き込み(プロジェクト説明キャラバン隊編成など)
  • ステークホルダーとのトップ会談
  • プロジェクトメンバーのモチベーションアップを図るための現場慰問
  • ねぎらいのメール
  •  マネジメント・レポートは,マネジメント層との貴重な接点ですので,うまく利用するとよいでしょう。

    ◆プロジェクトの経緯

     最後に,マネジメント・レポートには,プロジェクトの現在に至るまでの経緯を常に載せておく必要があります。マネジメント層は多忙なため,報告会議に出席するメンバーがいつも同じとは限りませんし,初めて参加するメンバーがいるかもしれません。過去の経緯をまとめた資料があれば,マネジメント層が報告内容を適切に理解する助けになります。