これまでは、Windowsパソコンの次もWindowsパソコンを導入するしか選択肢がなかったが、今は違う。実際、テレビ東京は次期クライアントとして、もう一度XPパソコンを大量導入するか、Vistaに移行するかの選択肢のほかに、第三の選択肢としてシンクライアントの導入を検討している(図7)。

図7●テレビ東京が検討している「XP以降」の3つの選択肢
図7●テレビ東京が検討している「XP以降」の3つの選択肢
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 個人情報の漏洩対策や、内部統制を目的としたセキュリティの強化対策として、シンクライアントを導入する企業が増えている。シンクライアントはユーザーが使用する端末に一切データが残らないのが特徴だ。OSやアプリケーション、ハードディスク、CPUといった端末に必要なものはユーザーと切り離され、すべてサーバー側に集約することができる。

パソコンの管理に効果的

 実は、このシンクライアントは、XPからVista、あるいは別のOS環境へ移行する上でも大きなメリットを発揮する。サーバー側でOSなどを一括管理しているので、OSの入れ替えは簡単にできる。OSを入れ替えずに環境を塩漬けにするという選択も可能だ。

 総合地所はかつて、OSのサポート期間が切れたNT4.0パソコンの移行に頭を悩ませていた。NTからXPに移行した場合、リースのタイミングから見積もると、すぐにXPの次のOSの検討を始めないといけないことが見えていたからだ。さらにもう1つ、このままXPパソコンに移行した場合、これまでと変わらずパソコンの管理に忙殺される可能性が高かった。当時、同社のシステム担当は1人。しかも、大阪と東京の2拠点のパソコンを管理しなくてはならなかった。

 そこで、同社はサン・マイクロシステムズのシンクライアント「Sun Ray」を使ってクライアントOSの移行と管理の効率化の課題を同時に解決する道を選んだ。

 クライアントの環境を、サーバー側のWindows 2000 Serverに集約。エンドユーザーにはTerminal Servicesの機能を利用して、2000パソコンの環境を提供する(図8)。操作画面はNT4.0とほとんど変わらない上、これまで使っていたExcelやWordといったアプリケーションも問題なく動く。「見た目には従来のパソコンと変わらないことから、エンドユーザーの教育もほとんど必要ない。今後のクライアント用OSの検証や、アプリケーションの検討に時間をかけられるようになった」と、総合地所の山室部長は満足げに効果を語る。

図8● シンクライアントでOSの移行とパソコンの管理を効率化した総合地所
図8● シンクライアントでOSの移行とパソコンの管理を効率化した総合地所
ExcelやWordといったアプリケーションはWindows 2000 ServerのTerminal Servicesを利用。外部とデータをやり取りするためや特別な用途向けにXPパソコンを別途用意する
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ASP型など新サービスも登場

 「シンクライアントは初期導入コストが高い」という声はいまだ多い。しかし、製品の価格競争などでコストが下がれば、TCO(総所有費用)削減も可能にする端末の選択肢として、十分にターゲットに入ってくる。

 実際、導入コストを下げる工夫をしたシンクライアント・サービスも出てきている。日立建機が採用した、日立ソフトウェアエンジニアリングが提供する ASP(アプリケーション・サービス・プロバイダ)型のシンクライアント・サービス「SecureOnline」だ(図9)。ASP型なので、独自にサーバーを用意したりする必要はない。また、仮想デスクトップ環境もすべてベンダーが管理してくれるため、日立建機側でOSやアプリケーションの細かな管理に気を配る必要がなく、TCO削減にも効果を発揮しているという。

図9●日立建機が採用したシンクライアントのASPサービス「SecureOnline」
図9●日立建機が採用したシンクライアントのASPサービス「SecureOnline」
システム開発プロジェクトや開発ベンダーごとに変動するパソコンの台数管理、ソフトの変更、OSの管理などの手間が省ける
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