社外に出ることが多い営業担当者にとって、ノートパソコンではサイズや重量の点で不満が大きくなることがある。しかも、紛失や盗難で情報漏洩を心配する声も上がり始め、外で使いたくても使えないという状況も出ている。セキュリティを高めるためにシンクライアントを導入するにも、ネットワークが届かない社外での利用は制約を受ける。

 このような背景からモバイル環境をカバーする端末として注目されているのがスマートフォンだ。特にWindows MobileのOSを搭載した機種は、通常のパソコンとそん色なく、ExcelやWordといったアプリケーションの利用が可能だ。紛失した場合にデータを自動消去できる製品もある。また、独自のアプリケーションを作成したり、Webアプリケーションが利用できたりすることから、営業や販売の支援システムとして採用する企業も急増している(表1)。

表1●スマートフォンを業務システム端末として利用している企業の例
[画像のクリックで拡大表示]
表1●スマートフォンを業務システム端末として利用している企業の例

ノートパソコンの代替として活用

 新薬開発に伴う臨床試験(治験)のサポート・サービスを提供するシーアールシージャパンもノートパソコンの代替端末を検討していた企業の1社だ。病院で働く治験コーディネータ用の端末として、パソコンの代わりにWindows Mobile搭載スマートフォンを採用した(図10)。社員の多くを占める女性からは、「『ノートパソコンよりもスマートフォンのほうが軽くて便利』と評価は上々」(CRCマネージメント本部の野崎伸本部長)という。

図10●臨床試験のサポート業務にW-ZERO3を活用しているシーアールシージャパン
図10●臨床試験のサポート業務にW-ZERO3を活用しているシーアールシージャパン
写真:いずもと けい
[画像のクリックで拡大表示]

 従来、一部の社員に配布していたノートパソコンと同様に、メールだけでなく、製薬会社から送られてくる伝達文書(Word)の閲覧や出退勤を管理するファイル(Excel)の入力ができるため、業務上、スマートフォンで全く支障がない。

 このように、スマートフォンを導入する企業が増えれば、端末はさらに進化する可能性がある。前述したように、スマートフォンは今後、米グーグルの「Android」などをきっかけにさまざまな端末が登場しそうだ。端末上で使用するアプリケーションをリッチクライアント技術などを活用してWeb化しておけば、端末のOSはなにもマイクロソフトのWindowsに限定されることはなくなる。こうした新しいクライアント端末の“姿”は2~3年先には、はっきりと見えてくるだろう。XPパソコンの寿命は、それを待てるぐらい長いのである。