自宅のインターネット接続環境を,下りの最大通信速度(ベストエフォート型)が160Mbps(ビット/秒)というサービスに変えてみた。それまでずっと8Mbpsのコースだったので,論理的には20倍になったわけだ。

 自宅は神奈川県にあり,CATVのジュピターテレコム(J:COM)のインターネット接続サービスを利用している。これまで,下り8Mbps,上り2Mbpsというコースを7~8年使ってきた。それで特に問題はなかったのが,最近になって,動画のコンテンツが途中で止まったり,VPN経由で会社にアクセスする際にもたつく感じがしてきた。

 上位のコースに下り30Mbpsというのがあるのは以前から知っていたが,8Mと30Mでは実効速度はさほど変わらないだろうと,アップグレードする気にはならなかった。変えるとすれば「次はフレッツ光かな」と思っていたぐらいだ。

 そうしているうちに,先月(2008年5月)ぐらいに,筆者が住んでいる地域でも,160Mコースが利用可能になったというお知らせが届いた。もう一つの選択肢であるフレッツ光のほうは,NGNサービスのフレッツ光ネクストが2008年3月に一部地域で始まったばかり。自宅周辺にサービスが及ぶのは当分先だろう。

 光ネクストのサービスが本格化すれば,いずれお得なキャンペーンを大々的に始めるにちがいない。そのときに移行するのでもよかろう。ここは,J:COMの戦略にまんまとはまることにした。月々の支払額は,別途申し込んだTVのサービスとあわせて1000円程度増える。しかし,それで20倍は無理としても,10倍ぐらい速くなればいいと考えた。

 通信速度(推定転送速度)を簡単に計測できるサイトがいくつかある。それらを使って,変更前(8Mコース)と変更後(160Mコース)にスピードテストをやってみた。

測定サイト 変更前 変更後
A BNRスピードテスト 2.293Mbps 28.813Mbps
B gooスピードテスト 2.86Mbps 28.35Mbps
C Gyaoスピードテスト 1.245Mbps 29.554Mbps
D Radish Network Speed Testing 下り3.643Mbps
上り1.949Mbps
下り29.84Mbps
上り7.930Mbps
※D以外は下りのみの計測

 実際には,(ほかの計測サイトも含めて)同じ時間帯でそれぞれ何度か計測している。表には,そのうちの安定した値をピックアップした。結果的には,変更前が1~3Mbpsで,変更後は28~30Mbpsといったところだろう。期待通り,約10倍のスピードになったわけだ。

 筆者の場合,1~3Mbpsの環境でも平気だったぐらいなので,10倍の数値には満足している。実際,ストリーミングの動画を見ていても,途中でバッファリングで止まるといったことがなくなった。実感で10倍とは言えないが,メール受信やファイル・ダウンロードで待たされる時間も短くなった。

 しかし「160Mコースなのに,実測が30M程度ではたいしたことはないな」と思う方もいるだろう。J:COMを擁護するわけではないが,実はまだ“のびしろ”があるのだ。

高速化のための二つの方策

 J:COMでは,160Mコースの利用者に対して,ブロードバンド最適化ツールというものを提供している。これは,Windows XP内部の「RWIN(Receive Window)」というネットワーク関連の値を変更するソフト(BBtuner.exe)だ。この値を変更することで,標準設定時よりもファイル転送速度が向上する可能性があるという。

 BBtunerを起動してみると,筆者の環境(Windows XP Home Edition SP2)では,RWINの初期値は「16384」となっていた。これを,J:COMが提示しているいくつかの参考値のうちの,一番小さな値「179200」に変更して,再度スピードテストをやってみた。

 結果から言えば,50Mbpsを超える値を表示したテストがある一方で,ほとんど変わらないものがあるなど,かなり結果にばらつきがある。これはRWINの特性によるものだろう(RWINについてはここでは説明しない。ネット上に参考になるサイトがいくつかあるのでそちらを見ていただきたい)。ただ,RWINを変更することで速度が上がる可能性があることは確かだ。

 もう一つ,筆者の環境で通信速度の“のびしろ”を狭めている可能性があるものがある。それはルーターだ。自宅で利用している無線LAN機能付きルーターは,2年前ぐらいに購入したものだ。スペックをあらためて読み返してみると,FTPの実効速度が約67Mbpsとなっていた。

 そこで,ルーターを介さず,ケーブルモデムとパソコンを直結して計測してみた。結果,A~Dのサイトで36.49~79.174Mbpsという値が出た。やはり,直結の方が速いようだ。しかし,我が家ではこのルーターを介して,リビングにあるPC,ハードディスク・レコーダー,Wiiなどが無線でネットに接続している。ルーターをはずすわけにはいかない。

 ともあれ,筆者としては30Mbps程度の速度でも満足だ。RWINをいろいろいじったり,ルーターを最新のものに変えればもっと速くなるかも,という事実がわかっただけで十分である。「自宅のネット環境が10倍になっても,原稿のスピードは全然変わらないじゃないか」とつっこまれる前に,この話は終わりにしたい。