米Microsoftの「Silverlight(シルバーライト)」,皆さんはもう使ってみましたか? Silverlightは,Microsoftが開発した,Webベースのクライアント技術です。Webブラウザのプラグインとして動作し,ブラウザ単体では実現が難しい,操作性に優れたWebクライアントを作ることができます。今回はSilverlightの概要を紹介し,次回からは実際のプログラミングを解説します。

 Silverlightの初めての正式版である「Silverlight 1.0」は,2007年9月にリリースされました。リリースからすでに数カ月が経ち,Silverlightを使ったサイトが増えてきています。Silverlightのプラグインを手元のブラウザにインストールした人も増えているでしょう。例えば,USENの動画配信サイト「GyaO」では,映画の予告編を見られるサイト「GAGA映画予告編」でSilverlightを使った動画配信を行っています(図1)。

図1●動画配信サイトGyaOの「GAGA映画予告編」。Silverlightを使って映画の予告編を配信している。Windows,Mac OS Xで視聴できる
図1●動画配信サイトGyaOの「GAGA映画予告編」。Silverlightを使って映画の予告編を配信している。Windows,Mac OS Xで視聴できる

MacでもLinuxでも同じものが動作する

 Silverlightは,Microsoftが「WPF/E(Windows Presentation Foundation Everywhere)」というコード名で開発を進めてきた技術です。WPFはWindows Vistaに標準搭載されている描画機構で,それまでWindowsで標準的に使われてきたGDI(Graphics Device Interface)と比べると,3次元グラフィックス,ビデオ,アニメーションなどを組み合わせた,より表現力に富んだユーザー・インタフェースを持つアプリケーションを作りやすいのが特徴です*1

 Silverlight(WPF/E)は,そのWPFをどこででも(everywhere),Webアプリケーションのクライアントとして使えるようにするソフトウエアです。フルセットのWPFに比べて,より非力なシステムでも動作するように構成を軽くしているほか,Windowsに加えてMac OS X版も用意しています。ブラウザはInternet Explorerのほか,Firefox 1.5/2.0,Safariも利用可能で,「クロスブラウザ,クロスプラットフォーム」であることが最大の特徴です(表1)。つまり,全く同じコードが,WindowsでもMac OS Xでも,Internet ExplorerでもFirefoxでもSafariでも動作します。

表1●Silverlightが動作するOSとブラウザ。Internet Explorer以外のブラウザやMac OS Xでも利用できる。マイクロソフトのWebサイト上の情報を元に作成
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表1●Silverlightが動作するOSとブラウザ。Internet Explorer以外のブラウザやMac OS Xでも利用できる。マイクロソフトのWebサイト上の情報を元に作成

 加えて,Silverlight向けのアプリケーションはLinuxでも動作するようになる見込みです。Microsoftは米Novellが中心となって進めている .NET互換環境の開発プロジェクト「Mono Project」で,Linux対応版のSilverlight実行環境を開発する「Moonlightプロジェクト」に参加しています(図2)。Windows/Mac OS X/Linuxで互換性があるクライアント環境になることが期待されます。

図2●Mono ProjectのMoonlightプロジェクト。Linux向けにSilverlight互換の実行環境を開発する
図2●Mono ProjectのMoonlightプロジェクト。Linux向けにSilverlight互換の実行環境を開発する