AIDMAからAISCEASへ

 専門家の皆さんには耳にたこができる言葉だが、いい機会なので復習も兼ねて敢えて触れてみよう。AIDMA(アイドマ)理論は、1920年代、アメリカのローランド・ホール氏が提唱した消費者行動の理論である。

 Attention(注意)→ Interest(関心)→ Desire(欲求)→ Memory(記憶)→ Action(行動)

 という一連の流れで人々が消費行動をとるという理論。提唱されてもうすぐ90年くらいになる。私も大学時代にこの理論を学習した覚えがあり、つい最近まで世界のマーケティング理論として王道を歩んできた。ところが、1990年代後半、ネットワークの普及に伴い、消費者の行動が大きく変化しだした。

 日本の電通は、いち早くAISAS(アイサス)

 Attention(注目)→ Interest(関心)→ Search(検索)→ Action(行動)→ Share(共有)

 という考え方を提唱したが、その後、同じく日本のアンヴィコミュニケーションズという会社が、

 検索の後に→ Comparison(比較) → Examination(検討)を追加して、AISCEAS(アイセアス)という考え方を提唱した。

 注目→関心→検索→比較→検討→行動→共有

 という流れになる。

 確かに端的に流れを現しているように感じるし、調査を行っても同様の結果となる。それぞれの消費者行動ステップをサイトが対応し、担っているのもはっきり見えてくるし、実際にそれぞれのサイトは大きなビジネスへと成長している。検索サイト、比較サイト、コマースサイト、共有サイトなどはいい事例が沢山ある。

 このような大きな経済変化と消費者行動におおきなうねりをつくったもっとも大きな要因は、『検索エンジン』の登場であろう。検索エンジンはマーケティングの分野に限らず、地球上のあらゆる分野での情報が一気に一体化し、仮想的に自分の書庫のような感覚を作り上げてしまったからだ。人類はこれまで経験しなかった豊かな情報の海の中で生活していくことになる。これは有史以来人類が初めて経験する全く新しいライフスタイルということが言えよう。

時代を変える『検索エンジン』

 2000年になっても検索エンジンの世界は試行錯誤。到底ビジネスにもならないし、サイトのサービスの一環としてしか捉えられず、検索エンジンのオーナーはベンチャー企業の域を超えることができなかった

 そのような砂漠の中で、ワード収集の合理的かつ効率的な自動化とワードの重み付け、リンク相関からの優先順位付けなど、ロジック的にしっかりしていてキラリと光るベンチャー集団が現れた。Googleだ。

 早速コンタクトすると、サンフランシスコ マウンテンビューから、Googleのスタッフが我々の元へ飛んできた。彼らは検索に関する考え方や今後の展望などを語り、広告ビジネスモデルへ突っ走ることを宣言。当時、検索と広告ビジネスを真剣に事業として検討していた数少ないグループのひとつであったが、その後の株式公開と現在の成長をみれば、大成功であったことは誰も否定できないだろう。

 我々は、すぐにこのGoogle社の検索エンジンを自社サイト内の検索に使用することにした。世界で初めてのことだったようだ。Googleはその後ASPとして同様のカスタマイズサービスを企業サイトに提供するというビジネスモデルでも急成長した。世界中の企業はこれらの検索結果ページ上での熾烈な戦いを行うこととなる。彼らの当初のゴールであるビジネスモデルのはじまりだ。

 お客様は、インターネット検索でサイトへ行き、サイト内ではサイト内検索で目的とする詳細情報へたどり着くこともできる。トップページやインデックスに関係なしに、いきなり、目的とするコンテンツにアクセスすることが大半になっているのも、この検索あってのことだろう。広告宣伝でもURLを告知せず、検索ワードを告知することが普通になった。

 お客様はランダムに情報の海を瞬時に移動し、S(検索)、C(比較)、E(検討)を繰り返しA(行動)に移行する。従ってこの過程でいかに自社情報をより多く、正しく伝えることができるかが、売り上げや業績に直につながるということになる。

 アクセス数と売り上げ(リアルビジネスも含めて)は、非常に強い相関があることはあらゆる調査でも明らかになっている。ウェブサイトオーナーは、この事実を冷静に認識し、適切な対応策を講じなければならない。