筆者らが編集作業に携わった書籍「グリーンIT 完全理解!」が,今週初めに印刷会社に無事入稿された。あとは6月23日の発売日を待つばかりだ。この書籍が企画された背景や経緯,内容などについては,実際に取材に駆け回った担当記者が詳しく書くと思うので,ここでは個人的に印象深かったトピックを紹介する。

 それはIT機器の廃棄/リサイクルに関するものだ。独立行政法人の物質・材料研究機構によると,国内に蓄積されているリサイクル可能な金属資源の量を算定すると,「金が約6800トン(世界の現有埋蔵量の16%),銀が6万トン(同22%),インジウムが1700トン(同61.1%)。この他,錫やタンタルなど,世界埋蔵量の1割を超える金属がたくさんある」という。資源小国と呼ばれることに慣れてしまっている我々にとって,なんとなくうれしくなる話ではないだろうか。

 どうしてこのような数値になるかというと,「一般に,1トンの金鉱石から採取できる金の量は4~5グラム。これに対して,1トンの使用済み携帯電話からは,金を150グラム,パラジウムを50グラム,銀を1.5キログラム,銅を100キログラム回収できる」からである。携帯電話やパソコン,家電などの電子機器を総称して「都市鉱山」と呼ぶほどだという。

 もっとも,この数値は,産業連関表と工業統計に基づいて算出された,紙の上の値に過ぎない。実際には,多くの個人情報を格納すると同時に音楽プレーヤーやカメラなどの機能を備えた携帯電話の回収量は減少を続けている。リサイクル制度に沿ったパソコンの回収量も,2006年度の100万台から頭打ちの状態だ。理由の一つに,スクラップ市場での取引価格が国内水準を上回っている新興国に,これらの資源が流出していることが挙げられるという。

 リサイクル制度を見直すなどして効率の良い資源循環の仕組みを確立するには,もちろん政府などの公的な取り組みが不可欠だ。ただ,個人でも,不要になった電子機器は速やかに,信頼できる業者にしかるべき代金を支払って引き取ってもらう,といった,身近な取り組みは必要だろう。筆者はとりあえず,ひょっとしたら使い道があるかも,とこの数年間にわたって死蔵しているPentium MMX搭載パソコン2台を引き取ってもらうところから始めようと思う。