Vista SP1の提供が始まったからといって、XPの寿命を考慮すると、あわててVistaに乗り換える必要はない。とはいえ、何の計画も立てず、「使えるところまで使え」とばかりにXPの利用を引っ張れば、14年のサポート終了とともにXPと心中することになる。これから先、“いつ、何を”XPの代わりに導入するのか、入念に戦略を立てておくことが重要だ。

 XP以降の主な選択肢は3つある(図5)。1つは、これまで通りパソコン(ファットクライアント)を継続して使い続けるという、一番メインのシナリオだ。もう1つは、シンクライアントへ移行するシナリオ。近年、セキュリティ対策として普及し始めたが、実は大きなポテンシャルを秘めている。3つ目が、スマートフォンといった新たな端末を利用するシナリオだ。今やIT機器はパソコンだけではない。「パソコンの次はパソコン」という発想はすでに過去のものとなりつつある。

図5●XPからの3つの移行シナリオ
図5●XPからの3つの移行シナリオ
3つの移行シナリオには、それぞれ長所と短所が存在する。複数の選択肢を組み合わせて、2~3年先を見越した戦略を立てる
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 もちろん、これら3つのシナリオから1つだけを選ぶ必要はない。自社の要件を踏まえた上で、シナリオを組み合わせて戦略を立てればよい。

シナリオ1:パソコンの継続はタイミング勝負

 「Windows VistaのSP1が出たら、XPから乗り換えよう」と、SP1の出荷時期に照準を合わせVistaへの移行を考えていたユーザー企業は多い。

 そもそもマイクロソフトは、「Vistaの出荷開始時点で利用できるソフトやハードの種類は、XPのそれと比較して2倍以上」(Windows本部の東條マネージャ)と主張していた。しかし、Vista SP1の登場でようやく環境が整ってきたというのが実情だ。「SP1の登場を待って、それからデバイス・ドライバの開発などを進めるメーカーが多い」(日本ヒューレット・パッカード パーソナルシステムズ事業統括 デスクトップ&PSGサービスビジネス本部の平松進也 本部長)ためである。

 先述のテレビ東京や帝国ホテルは、業務に不可欠なソフトがVistaで動作しないため、Vistaパソコンの導入を保留した。今後、こうした状況は徐々に解消に向かうだろう。Vistaへの移行を検討している企業は、自社で利用しているソフトやハードがVistaに対応しているか、メーカーのWebサイトを定期的にチェックしたり、営業担当者に問い合わせたりして、状況を把握しておきたい。