写真●ワシントンでの会議の様子
写真●ワシントンでの会議の様子
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 PC236の国際会議が,2008年4月21日(月)~25日(金)に米国ワシントンで開催された。PC236とは,プロジェクトマネジメントの国際規格(ISO21500)を策定する専門委員会のことである。今,ISO(国際標準化機構)の場で,プロジェクトマネジメントの国際規格作りが始まっているのである。

 現在は,ワーキング・ドラフト(WD)案が作成されたところだ。ワシントンで開催された会議の目的は,3月に作成されたWD案に対して審議・修正することにある。日本からは,関哲朗 文教大学准教授を委員長とするISO PC236日本委員会のメンバー6人が参加した。日本としても国際規格化に貢献したいという思いがあり,ワシントン会議に先立つ2007年10月に開催されたロンドン会議では「日本は規格文書の一部を記述する」と提案していた。日本が準備したものは,事前に各国のメンバーに配信され,コメントももらっていた。

 PC236は,三つのワーキング・グループ(WG)に分かれ,活動している。今回のワシントン会議での主な活動は,WG1とWG2に参加する委員は,自分からのも含め既に提出されているコメント対応。WG3に参加する委員は,自分たちの文案に対してコメントをいかに反映するかであった。

 一般的に,ISOにおける国際標準は次のような段階を経て制定される。

 第1段階(提案段階) :新規規格の提案および投票
 第2段階(作成段階) :作業原案(ワーキング・ドラフト,WD)の作成
 第3段階(委員会段階):委員会原案(コミティ・ドラフト,CD)の作成
 第4段階(承認段階) :国際規格として承認
 第5段階(発行段階) :国際規格発行

 ワシントン会議は,国際規格の実施レベルとしては,第2段階(作成段階)との位置付けである。先はまだ長い。2月15日にワーキング・ドラフト(WD)第1版が作成されたばかりで,ワシントン会議ではこれを叩き台として修正作業を進めた。WD第1版は,下記の章立てになっている。

 1.スコープ(適用範囲)        … 1ページ
 2.引用規格              … 1ページ
 3.用語と定義             …44ページ
 4.プロジェクト・マネジメント概要   …6ページ
 5.プロジェクト・マネジメントプロセス …36ページ
 アネックス(付属書)         …11ページ

 計約100ページである。最終形としては40~50ページまで圧縮することを目標としている。WDが何版まで作成されるかは,ワーキング・グループ(WG)がどの段階で満足するかによって決まる。

ワシントン会議の様子

 会議の日程は4月21日~25日。場所はワシントン・ダレス空港マリオットホテルである。まさしく朝から夕方まで会議。夜はロビーなどで深夜まで議論。欧米からの参加者の体力には本当に驚いた。そして翌日も朝最初からいるのがすごい。

 毎日,会議が終わった後,非公式なものも含めて何らかの親睦会が開催されていた。公式なものは,米国主催のカクテル・パーティやツアー,日本が米国代表やフランス代表を招待した食事会があった。それ以外に,ホテルラウンジで各国代表入り乱れての飲み会があり,それは深夜1時ころまで続いていた。これらの親睦会を通じて,各国の代表と親しくなり,会議仲間の一員として受け入れられることになるようである。これも我が国代表の大切なミッションの一つと認識した次第である。

 会場は,全体会とWG2が使用した200人は入る大きな部屋が一つ。WG1が使用した40名程度の部屋が一つ。WG3が使用した40名程度の部屋が二つ。そのほか事務局などが使う2部屋で,計6部屋。一日中絶えることのないコーヒーとスナックが会議室をつなぐ広い廊下にあり,長時間会議をする環境としては申し分なかった。