YouTubeやGyao、ニコニコ動画などの登場で、PCでは今や当たり前となった動画サービス。一方携帯電話の場合、通信速度やパケット料金などの問題から、長時間の動画を快適に楽しむのは難しいとされてきた。

 だが近年、いわゆるパケット定額制のサービスが普及したことに加え、最大3Mbps以上とADSL並みの通信速度を実現する、HSDPAやEV-DO Rev.Aなどの高速通信方式に対応した携帯電話が増えている。こうした条件が整ってきたことから、いま携帯電話向けの動画サービスが急激に増えているのだ。

携帯電話の動画配信方式は3種類

 PC向けの動画配信サービスは、Windows Media Videoを用いたものと、Flash Videoを用いたものの2つに大きく分かれている。一方、携帯電話向けの動画配信サービスは大きく分けて3つの配信形態に分かれており、それぞれ対応するサービスや利用可能なキャリアなどが異なってくる。

1. 携帯電話内蔵の動画再生機能を利用したもの

 主要3キャリアの携帯電話の多くには、「iモーション」「EZムービー」といった、動画を再生するための機能があらかじめ用意されている。これらに対応した動画を配信するというのが、最も基本的なサービスとなっている。代表的なサービスとしては、NTTドコモ向けの「YouTubeモバイル」や、ソフトバンクモバイル向けの「Yahoo!動画」などが挙げられる。

 この方式では、内蔵のプレーヤーを使用するので手間はかからないものの、再生可能な動画の容量に制約が課せられており、数分程度の短い動画しか楽しめないことが多い。もっとも、こうした制約はHSDPAなどの高速な通信方式に対応した端末では改善されつつあり、NTTドコモでは904iシリーズ以降、iモーションの容量を10MBに拡張しているほか、auも長時間動画配信を可能にする「LISMO VIDEO」を、KCP+を採用した端末向けに提供することを予定している。

2. 携帯アプリのプレーヤーを使ったもの

 iアプリなどの携帯アプリで作られた動画プレーヤーアプリを用い、その上で動画をストリーミング再生するというもの。プレーヤーアプリとしてはjig.jpの「jigムービー」が有名であり、フロントメディアの「Qlick.TV」や、Gyaoの携帯電話向けサービス「モバイルGyao」など、多くの動画配信サービスで利用されている。使用するアプリは異なるが、「ニコニコ動画モバイル」もこの方式を採用している。

 この方式のメリットは、1のような制約がなく、長時間動画の配信が可能だということ。事実アプリを用いた動画配信サービスでは、2時間を超える長編映画なども多数配信されている。一方で携帯アプリの制約に大きく影響されてしまうことから、アプリ上での通信容量に厳しい制限を課すau向けには、サービスの提供自体困難となっている。

3. 深夜に長時間動画を一斉配信するもの

 ユーザーが直接動画をダウンロードするのではなく、あらかじめ予約設定した動画を深夜に配信するというサービスも存在する。auの「EZチャンネル」や、NTTドコモの「Music&Videoチャンネル」などがそれに当たる。

 この方式の場合、キャリアからすると回線の空いている時間帯に動画の一斉配信を行うため、通信回線に与える影響が少ないというメリットがある。しかし当然ながら、見たい動画をその場ですぐ楽しむことはできないので、ユーザーからしてみればデメリットの方が大きい。