「三菱東京UFJ銀行は5月12日、情報システムの一本化をいよいよ始めたが、大きなトラブルは無く、年末まで続く一本化作業はまずまずの滑り出しとなった」

 こういう書き出しと論旨の一文を書いて公開したら、読者の皆様の多くは「テレビや新聞は、12日から13日にかけてシステム障害が発生と大々的に報じていたではないか」と首をひねるに違いない。「まずまずの滑り出し」と筆者が書きたいのは、システム全体を見渡すときちんと動いており、一部で発生した不具合を当日すぐに修復できたからだ。

 筆者は4月23日付本欄で「失敗を期待するマスメディアを裏切って、三菱東京UFJ銀は一本化プロジェクトを成功させると確信している」(「失敗を待つマスメディアの監視下、システム一本化を始める三菱東京UFJ銀行」)と書いた。続く4月24日には、ITproのコラム欄に「この巨大システムは大きなトラブルなく、必ず動くと信じている」とまで書いた(「6000人が作ったシステムは必ず動く」)。

 5月12日にテレビや新聞で報道されたトラブルがあったものの、筆者は上記の記述を撤回あるいは修整するつもりはない。年末までに一本化は終了すると思うし、大きなトラブルは今のところ起きていないと考えている。

 こう書くと「そうは言っても障害が起きたことは事実。必ず成功すると書いたお前は意地を張っている」と思われるかもしれない。意固地になっているつもりはないが、複数の尊敬する知人から「必ず成功するなどと極端なことを書くから恥をかく。しばらく頭を冷やして沈黙されたし」と言った趣旨のメールが送られてきた。本来、知人の忠告には耳を傾けるべきである。

 当事者の三菱東京UFJ銀は「不便、迷惑を深くお詫びする」(13日付の日本経済新聞記事)と平身低頭の姿勢であり、それ以上のコメントを控えている。テレビや新聞の関心事が別の所に移った今、「大きなトラブルなく」動いたと筆者が主張すると、同行は「ありがた迷惑」「そっとしておいてほしい」と困惑するかもしれない。