東京・目黒にある新生銀行の運用センター。日本人とインド人が大型画面を見ながら、勘定系などシステム全般の動作状況を監視している(写真4)。そこにはテレビ会議システムの端末もあり、同じような運用センターが映し出されている。画面の向こうはシンガポールだ。2007年9月から段階的に使い始め、この2月から本格的に稼働させたばかりである。

写真4●東京・目黒にある新生銀行の運用センター
写真4●東京・目黒にある新生銀行の運用センター
シンガポールにも同様の拠点を構えている

 シンガポールの運用センターは、東京の運用センターがあるビルで動作するHPとデルの小型サーバー1500台と、それらの上で動く各システムの動作状況などを監視する。佐藤芳和執行役システム企画部長は、「ネットワークを介して東京と同レベルの業務ができるようにしてある」と説明する。東京のバックアップという位置付けではなく、月曜日は東京、火曜日はシンガポールといった具合に2つの拠点を併用していく考えだ。

Windowsは英語版を利用

 なぜシンガポールなのか。佐藤執行役は、「英語ができるインターナショナルな人材を確保したいから」と答える。新生銀行は邦銀ながら、英語の活用にこだわっている。海外製のソフトウエアは基本的に日本語版でなく英語版を使う。Windowsはもちろん、印i-flexソリューションズの「FLEXCUBE」、印ニュークリアス・ソフトウェアの「FinnOne」などもそうだ。「最新版が出るのもバグ対応も英語版が先」(佐藤執行役)なので、少しでもアドバンテージを生かしたいと考えているのだ。

 英語版は画面表記も当然英語。となると、運用要員も英語が分かることが条件になる。ならば東京よりもシンガポールがいいと結論付けた。技術者の人件費は東京と変わらないという。

 開発と同様にインドに任せる手もあった。だが、インドは東京と3時間半の時差がある。シンガポールは1時間だ。運用業務だけに、トラブルが発生したときなどはリアルタイムのコミュニケーションが不可欠だ。ここが開発業務との大きな違いだ。時差が小さいに越したことはないと考えた。

 新生銀行のリソース調達で、日本人を使っているのは「運用オペレーション要員ぐらい」(佐藤執行役)。その運用さえ、シンガポールに移ると、日の丸ベンダーの仕事はさらに減る。