NTTドコモとKDDIの2007年度通期決算は,NTTドコモが減収増益,KDDIは増収増益で両社ともに利益を確保した。一見堅調な両社だが,どちらも2008年度は携帯電話市場の伸びが鈍化すると予測。本格的な低成長時代を迎えるにあたって,既存顧客を重視する戦略や,新分野開拓の取り組みによって来期の収益確保を狙う。

 NTTドコモの2007年度の売上高は,「ファミ割MAX50」など新割引プラン導入で対前年比1.6%減の4兆7118億円と減収だった。だが,営業利益は対前年比4.5%増の8083億円と増益だ。

 KDDIは,au携帯電話が3月に累計3000万契約を突破するなど携帯事業が増収増益に貢献。全体の4分の3以上を占める携帯事業の売上高は対前年比6.9%増の2兆8626億円,営業利益は同18.0%増の4550億円を確保した。

 決算からは順調に見える携帯電話事業だが,08年度の見通しは明るくない。両社ともに携帯市場の伸びが鈍化すると予測しているからだ(表1)。

表1●NTTドコモとKDDIはいずれも2008年度の端末販売台数やARPUが減少すると予測
表1●NTTドコモとKDDIはいずれも2008年度の端末販売台数やARPUが減少すると予測

写真1●KDDIの小野寺正社長兼会長(左)とNTTドコモの中村維夫社長(右)
写真1●KDDIの小野寺正社長兼会長(左)とNTTドコモの中村維夫社長(右)
 KDDIの小野寺正社長(写真1左)は,08年度の同社の携帯純増数を「2007年度の215万の約4割減となる126万」と予測。端末販売台数も07 年度に比べ約1割減とした。一方のNTTドコモは既に純増数の頭打ちに直面。08年度は増加を見込むが,これは1台で2契約となる「2in1」を見込んだものだ。

 ここ数年続いているARPU(1ユーザー当たりの月間平均収入)の減少も止まりそうにない。NTTドコモの08年度予測は720円減となる5640円,KDDIは600円減の5660円。いずれも大きく下降すると予測している。

08年度は事業戦略が大きく変化

 伸びの鈍化を予測しているにもかかわらず,NTTドコモとKDDIの08年度収支予測は増収増益だ。いずれも環境の変化に合わせて事業戦略を変えて,利益を確保するとの考えである。

 例えばNTTドコモは決算発表前の4月18日,既存顧客を優遇する戦略を発表。解約率の低下など“守り”の経営を主軸に,利益確保を目指す方向を打ち出した。KDDIの小野寺社長は「通信モジュールや法人向け市場はまだ大きく伸びる」と語り,新たな市場開拓に意欲を見せる。

 事業戦略だけでなく,「収益構造も大きく変化している」(NTTドコモの中村維夫社長,写真1右)。

 端末販売台数の減少で,これまで販売店に支払っていた販売奨励金の総額を抑えられる。つまり端末市場の縮小が一時的には事業者の増益に結び付くのだ。実際NTTドコモは07年度の営業費用を前年度よりも1111億円減らしており,これが増益の要因となった。08年度も同じ傾向が続くと見られる。

KDDIも割賦販売方式を導入

 端末価格と通信料金を分ける「分離プラン」も08年度の収入増に貢献しそうだ。仕入れ値以下で端末を販売し,値下げ分を事実上通信料金に上乗せして後から回収するこれまでの販売奨励金モデルは今後減っていく。その代わりに通信料金を下げて,端末を仕入れ値以上で販売するモデルは増加し,端末販売による収入増が見込める。

 こうした構造の変化に合わせ,これまで割賦販売を導入してこなかったKDDIも,決算会見で08年度中の割賦販売開始を明言している。