国内のリソース、ノウハウしか持たない「日の丸ベンダー」で満足していた企業が海外ベンダーの活用に目覚め始めた。海外拠点のガバナンス強化、機動的なマンパワー調達、先進的なパッケージの導入ノウハウなど、日の丸ベンダーには対応できないニーズが日増しに大きくなっているからだ。

 欧米に本社を置くグローバル企業では、現地法人任せだったシステム運用を集約したり、開発や保守を全世界で一括発注したりするケースが珍しくない。どんな国・地域でも均質なサービスを提供する「グローバル・ベンダー」がIT戦略の実行を支えたからだ。

 逆に“IT鎖国”の環境に置かれた日本企業は、国境を越えて最適なリソースを最適な場所からダイナミックに提供する「グローバル・ソーシング」で後れを取った。それに気付いた企業が走り始めたのである。欧米のライバルと市場でぶつかる日系グローバル企業にとって、グローバル・ソーシングは今や必然の流れとなった。

 1990年代のオフショア・ブームと違うのは、開発だけでなく、要件定義から保守・運用まで業務の幅が拡大したこと。調達先もインド・中国にとどまらず、南アフリカやシンガポールなどに広がった。流通、保険、銀行といった国内市場中心の企業が動き始めたのも大きな変化だ。

 企業がITで競争力を高めるには、IT部門の目利き力が不可欠。フラット化する世界から目をそらし、鎖国を続けるIT部門に明日はない。

インフラ関連の委託先を絞り込む

 「国産ベンダーとは、これからも情報交換などのお付き合いは続けたい」。スイスの製薬大手ノバルティスの日本法人、ノバルティス ファーマの沼英明執行役員CIO(最高情報責任者)は、遠慮がちに話す。同社は現在、運用などインフラ関連の担当ベンダーを全面リプレースしている真っ最中だ。

 世界140カ国で事業展開するノバルティスは、2008年1月から1年がかりで、インフラ関連の委託先をグローバルで約40社から4社に絞り込む「ベストストラクチャー」計画を実行中。日本法人の取り組みは、この方針に従ったものだ。既存ベンダー40社には、国産勢が2~3社食い込んでいたが、2008 年末までにお役御免となる。

 ベストストラクチャー計画の目的の1つは、コストの2けた削減だ。ただし、それだけではない。沼CIOは「世界の全拠点で、サービス品質の統一と向上を果たしたい」と説明する(図1)。今までは各国がそれぞれシステム運用などの委託先を決めていたため、サービス品質がそろっていなかった。

図1●日の丸ベンダーが応えられない3つの要望と、グローバル・ベンダーの解決策
図1●日の丸ベンダーが応えられない3つの要望と、グローバル・ベンダーの解決策
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