運用による省電力化へのアプローチはもう一つ考えられる。主に空調の制御などのために,センサー・ネットワークを構築することである。温度を適正に保つことによって,IT機器と空調の両方で消費電力を適度に抑えると同時に,機器の故障を未然に防止する効果がある。

 そのためのソリューションも登場している。日立製作所は,小型無線センサーと運用管理ツールを連携させた温度監視の仕組みを提供している。まず,サーバー・ルームやデータ・センターのラックに,温度監視用の小型無線センサー「AirSense」を取り付ける。AirSenseが計測した温度情報を無線通信方式「ZigBee」を使って,温度監視用サーバーに送信。温度監視用サーバーが統合管理ツールの「JP1/Integrated Management」に温度の情報を送ると,監視画面にマップが表示され,ラックなどの温度を確認できる(図7)。システム管理者は熱異常を確認すると,該当するサーバーを省電力モードに切り替えたり,空調設備を調整したりして,問題に迅速に対応できるようになる。

図7●サーバー・ルームの温度の監視モニターの画面
図7●サーバー・ルームの温度の監視モニターの画面
熱異常を検知して即座に負荷分散や電源オフなどの対応を取ることによって,過剰な冷却を避け,省電力化を図れる。

 サーバーの温度や稼働状況と空調設備の消費電力を連動させる仕組みも開発されている。日本IBMの運用管理ツール「IBM Systems Director Active Energy Manager」がその一つだ。サーバーの温度,消費電力などの情報を収集し,サーバーの状況に応じて空調設備を制御できる。こうすることによって,適度な温度を保ちながら空調設備の消費電力を必要最小限に抑えられる。

 日本HPが提供する「ダイナミック・スマート・クーリング」などのサービスを活用すると,より空調の制御を実現しやすい。これは,データ・センターの空調効率向上を支援するサービス。ラックごとに設置したセンサーからサーバーの温度を集計し,適切な温度を維持するように空調を制御する。このサービスを使えば,ユーザー企業が自力でセンサー・ネットワークと空調の連携システムを構築する手間を省ける。

サーバー・ルーム効率運用の支援サービスも

 ネットワークやシステムのリプレース,あるいはオフィス移転などに伴ってサーバー・ルームの省電力化を進めようと考えているなら,コンサルティングなどの支援サービスを使ってもよいだろう(次ページに関連記事)。データ・センターの省電力化のノウハウをソリューションとして提供するサービスだ。実際,「グリーンIT支援サービス」は相次いで登場している。

 サービスの一例が,NTTデータの「グリーンデータセンタサービス」。データ・センターの環境改善や運用管理を支援するサービスで,2008年1月に開始した。企業のデータ・センターやサーバー・ルームのIT機器の設置環境の評価,空調のシミュレーション,仮想化によるサーバー統合などを行い,省電力化を後押しする。

 サーバー・ルームのファシリティ構築・運用支援に特化したサービスもある。富士通が2007年12月に開始した「グリーン・インフラ・ソリューション」や,この4月に日立電子サービスが開始する「情報システムファシリティ省電力化ソリューション」などがそうだ。

 富士通のサービスは,富士通自身が東京第2システムセンターを設置する際に得たノウハウを提供するもの。設備計画の立案や最適化の効果測定を行う「ファシリティコンサルティング」から,一級建築士によるデータ・センターの設計,構築,運用までをサポートする。熱流体シミュレーションによる空調・ラックの最適配置,高効率のUPSの導入,ラック温度のモニタリングなどに対応する。

 一方,日立電子サービスの場合は,稼働中のサーバー・ルームの省電力環境を診断し,空調効率の改善策や省電力化に役立つ機器の導入などを提案する。ラックや空調設備などに温度,湿度,電力などを監視するセンサーを取り付けて,遠隔監視を行うサービスも用意している。