劣化することなく複製が容易なデジタル・データのコンテンツは,著作権保護のための仕組みが必要となる。現在,BSデジタル放送や地上デジタル放送では,「B-CAS」と呼ばれる著作権保護方式が採用されている。NGNのIPTVでも,これと同様の技術を導入している。

 NTTぷららがひかりTV向けに導入したのは,日立製作所が開発したIPTV向けDRMシステム「Videonet.CAS/DRM」である。このシステムには,「Marlin IPTV-ES」と呼ぶDRM方式が採用されている。

 Videonet.CAS/DRMを例に,IPTVでDRMを実現する通信手順を見てみよう(図1)。

図1●NGN上の映像配信でコンテンツの著作権を守るDRMの仕組み
図1●NGN上の映像配信でコンテンツの著作権を守るDRMの仕組み
NTTぷららがひかりTVに採用している日立製作所のIPTV向けDRMシステム「Videonet.CAS/DRM」の通信手順を示した。VOD型サービスでは番組ごとに,リニアTV型サービスでは一度だけライセンスの発行を受ける。
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 このシステムでは,まずユーザー側のSTBがサーバー側に視聴を要求する。その要求メッセージには,STBの識別情報(DRM-ID)が含まれている。サーバーは,DRM-IDでユーザーが登録済みの正規ユーザーかどうかを確認する。

 正規ユーザーに対してサーバーは,ライセンスをSTBに対して発行する。これは一種のデジタル証明書で,暗号化された映像データを復号するための復号鍵が含まれている。

 続いて配信サーバーは,暗号化された映像データをSTBに配信する。この映像データは,正規ユーザーに配布した復号鍵だけで復号し,取り出せるようになっている。

 このような基本的な手順は,地上デジタル放送やBSデジタル放送で採用されているB-CAS方式と同じ。ただし,Marlin IPTV-ESでは暗号化のアルゴリズムが強化されている。B-CASでは「MULTI2」と呼ばれる暗号化方式が使われているが,Marlinでははるかに強力な「AES」が採用された。