NTT東西のNGN商用サービスの開始とともに,その最大の目玉であるIPTVサービスもスタートした。NGNで提供される最初のIPTVサービスが,NTTぷららとアイキャストが提供する「ひかりTV」である。

 NGNの展開エリアがまだ狭いため,NGNを使ったひかりTVを実際に視聴できる地域は限られている。今後,NGNのエリアが広がるとともに,NGNでひかりTVを利用できるエリアも順次拡大していくという。

 ひかりTVのサービス・イメージは,4月16日に再オープンしたNGNのデモ・スペース「NOTE」で体験できる(写真1)。

写真1●NOTEで展示したIPTVのデモ
写真1●NOTEで展示したIPTVのデモ
4月16日に新装オープンしたNGNのデモ・スペース「NOTE」(NTT Open Telecom Experience)で展示されたIPTVサービス「ひかりTV」のデモの様子(a)。右の写真は,ひかりTV向けSTB「PM-700」(b)。なお,GyaO NEXTのNGN版のデモも行われていた。

ユニキャストとマルチキャストの2タイプ

 ひかりTVを例に,IPTVのメニューと料金イメージを紹介しよう(図1)。

図1●NGNを使った映像配信サービスの概要
図1●NGNを使った映像配信サービスの概要
ユーザーはまず,NTT東西のフレッツ 光ネクストに加入し,そのうえで映像配信サービスを契約する。映像配信サービスを提供する配信事業者向けにNTT東西が「フレッツ・キャスト」という接続サービスを用意している。
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 IPTVには,「VOD」と「リニアTV」という2種類のタイプのサービスがある。

 VODは,ユーザーが好きな番組を選び,好きな時間に視聴するサービスである。いわばネットワーク経由のビデオ・レンタルだ。VODでは,端末と配信サーバーがエンド・ツー・エンドで,1対1に通信する「ユニキャスト」という通信方式を使う。

 リニアTVは,決められた放送スケジュールに従って番組をリアルタイムに配信する放送タイプのサービス。多チャンネル放送やNGNで提供を始めた地上デジタル放送のIP同時再送信がリニアTVに属する。リニアTVの場合,配信サーバーと端末が1対多の関係になる「マルチキャスト」という通信方式を採用する。

 これらのIPTVサービスをNGN経由で利用するには,NGNの光ブロードバンド・サービス「フレッツ 光ネクスト」を契約しなければならない(図1)。

 NGNにはNTT東西が配信事業者に提供する「フレッツ・キャスト」というサービスもある。配信事業者がNGNに接続し,NGNの転送機能によって映像をエンド・ユーザーまで届けられるようにする。NTTぷららも,ひかりTVのVODとリニアTVのサービスを提供するために,このフレッツ・キャストを利用している。

 フレッツ・キャストには,マルチキャストとユニキャストの両方のメニューがある(図1)。ユニキャストはベストエフォート型と帯域確保型のどちらかを選べるが,マルチキャストではベストエフォート型だけを提供する。ただし,NTT東日本によれば,「マルチキャストでの帯域確保型サービスは提供しないというわけではなく,現在検討中」だという。

宅内に置く三つの装置で実現する

 NGNを使ったIPTVでユーザー宅内に置かれる装置は,(1)テレビ,(2)セットトップ・ボックス(STB),(3)ホーム・ゲートウエイ(HGW),(4)ONUの4種類。このうち,(4)は光ファイバを終端する役割を果たすだけ。IPTVの通信に積極的にかかわるのは(1)~(3)の三つである。

 (1)のテレビは,ユーザーが用意するもので,一般的な市販品である。(2)と(3)はNTT東西が配布する。ただし,(2)はNTTぷららとIPTVを視聴する契約を結んだユーザーだけに配る。

 (2)は,映像データの受信と復号のほか,番組表を取得して表示したり,リモコン操作の情報をサーバー側に送ったりする役割を果たす。

 (3)は,NGNへの接続や「SIP」を使った帯域確保型通信を実現する。IPTV独自ではなく,NGN上での通信に必須の装置である。

 一方の配信事業者は,自社のデータ・センターに,配信サーバーをはじめ,様々なサーバーを置いている。これらの具体的な種類や役割については,続く「技術編」で詳しく見ていく。