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プロジェクトのレビューには,重要な意味がある。
一つは,質的(品質)な進捗の把握である。レビューをすると,機能の漏れや抜け,不具合などがある程度分かる。特に,その分野の有識者や顧客が参加するレビューには効果がある。上流工程で品質が確保できるので,手戻りを削減でき,生産性向上にもつながる。
もう一つは,メンバーの育成である。レビューを通して,機能や業務,システム全体を理解してゆくことができるからである。
プロジェクト・マネージャ(PM)は,各種レビュー日程を計画に反映しておく必要がある。しかし,プロジェクトに遅れが生じると,ついレビューを省いたり,簡単に済ませてしまったりするケースをみかける。そのようなプロジェクトは,後工程(テスト)で問題が発覚し,手戻りのコストや工数が膨れ上がり,不採算や納期遅延となっている。だから,レビューを省いてはいけない。
優秀なPMほどレビューを受けることを大事にする
プロジェクトでは,中間成果物として様々なドキュメントが作られる。特に要件定義書などのレビューは,顧客を含めた公式レビューとして実施する。このレビューで顧客ニーズの把握や不明確な仕様を確定させていくことができる。
社内ではメンバー以外の第三者(専任レビュワーや品質保証部門など)を加えた公式レビューを実施したい。それによって,漏れや不具合を排除できるし,客観的な質の評価も可能となる。基本設計書や仕様書のほか,プロジェクト計画書やテスト計画書などの計画書類もレビューの対象とし,妥当性を検証する。
多くのPMはレビューで不具合を指摘されることを嫌う。しかし,レビューを活用してPM自身がプロジェクトに対する客観的な評価を把握するのは,非常に有効である。プロジェクトを成功させる優秀なPMに話を聞くと,レビューの重要性,とりわけ第三者が参加するレビューの重要性を十分認識している。各種ドキュメントのレビューを通して,PMはリスクを想定でき,事前に対応策を検討することができるからだ。つまり,想定できるリスクが発生しないように予防措置(予防対策)を取ったり,不幸にも発生した場合の対応策(発生時対策)を検討しておくことができる。
リスクが発生した場合のPMのオペレーションに会社(組織)として権限を委譲しておくことで,即断即決できるようにしておくことは重要である。また,対応策を検討することでリスクの共有化も図ることができる。
レビューにも準備が必要
実際のレビューでよく聞くのは,ドキュメントの記述内容の説明と質疑応答で時間切れになって,肝心の問題発見まで至らないケースだ。必ずレビュー対象のドキュメントを事前に参加者へ配布し,一読させておき,レビュー時には説明を省いたりポイントのみの説明としたりする。解決策の検討に時間がかかる案件は,別途開催とすることも必要だ。業種ごとに共通してよく指摘される事項については,チェックリストにまとめておき,事前にチェックし,チェック結果をレビュー時に提出して時間を有効に活用するといった工夫も必要だ。
レビュー時間は,長くても2時間程度に抑えたい。これは人間の注意力が持続する限界がほぼ2時間であると言われているからである。2時間で終わらない場合は,いったん休憩をはさみ再開する。
ドキュメントが分厚い場合は,すべて出来上がってからレビューを実施するのでなく,ある程度まとまった段階で少しずつ実施していく。段階的にレビューの質を高めていくのも効果的である。
レビューの記録を残す
レビューを実施した場合は,必ず記録を残す。レビューで指摘されたことが反映されているか,後で確認するためである。せっかく時間をかけて有効な指摘が得られても,反映されなければ何の意味もない。
特に,顧客を加えたレビューの記録は残しておく必要がある。システムが完成した時点で「こんな仕様ではない」などと言われた場合,確認や検証が可能となるからだ。また,参加者や指摘事項の記録を残すことで,定量的把握やレビュー実施前の「事前チェックリスト(図)」としても利用できる。
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図●事前チェックリストの例 [画像のクリックで拡大表示] |
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