「既存のERP(統合基幹業務システム)パッケージは、自社の業務プロセスを十分に支援する機能がない」。こうしたユーザー企業の悩みを解決する製品を SAPジャパンと日本オラクルが提供する。SOA(サービス指向アーキテクチャ)に基づき、既存製品や自社開発のシステムを柔軟に連携できる環境の提供を目指す。

 業務プロセスを記述するだけで、別々のシステムに散在する機能を組み合わせて複雑なアプリケーションを開発できる。対象となるシステムは、ERP(統合基幹業務システム)パッケージや自社開発システムなど種類を問わない――。SAPジャパンと日本オラクルが、こんな世界を実現する新製品を相次いで発表した。

 両社の新製品とも、SOA(サービス指向アーキテクチャ)の考え方を取り入れ、アプリケーションが提供する「受注伝票処理」「在庫確認」「請求書発行」といった機能をサービスとして扱える仕組みを提供する(図1)。

図1●パッケージ・ソフトの機能を利用して新たなアプリケーションを開発する仕組みの概念
図1●パッケージ・ソフトの機能を利用して新たなアプリケーションを開発する仕組みの概念
パッケージ・ベンダーがGUIベースの開発支援ツールや、サービスの粒度を決めることで、開発しやすくなった
[画像のクリックで拡大表示]

 SAPジャパンが2007年12月に出荷を開始したのは、開発支援ツール「SAP NetWeaver Composition Environ-ment(CE)」とサービスを連携するためのミドルウエア群「SAP NetWeaver Process Integration(PI)」だ。

 日本オラクルも3月までに、「Oracle Application Integration Architecture(AIA)Foundation Pack」を出荷する。アプリケーションをサービスとして切り出すために必要な、サービスの定義や、サービスを管理するためのリポジトリなどをセットにした製品だ。

SOA特有の手間を削減

 新製品の投入により、「ユーザー企業自身が、SOAに基づいたシステムを開発できる環境がようやく整った」とSAPジャパン パートナー&マーケティング統括本部長の安田誠シニアバイスプレジデントは説明する。

 SAPジャパンは06年前半から、ERPパッケージやCRM(顧客情報管理)ソフトといった自社パッケージの「サービス化」に力を入れてきた。サービスの粒度の定義や、インタフェースの仕様などを公開。同時にパッケージの機能をサービスとして扱えるようにアーキテクチャを変更してきた。だが、「ユーザー企業がサービスを活用できるツールは十分にそろっていなかったのが実情」(安田シニアバイスプレジデント)だった。

 一方の日本オラクルは、SOAに基づいたシステムを開発するための開発環境やミドルウエア群をセットにした「Oracle SOA Suite」を07年1月に出荷済みである。今回、発表した「Oracle AIA Foundation Pack」は、Oracle SOA Suiteを利用して、同社のアプリケーション製品群だけでなく、他社製、自社開発のアプリケーションをサービス化するための仕組みを提供する。「SOA に基づいたシステムを構築する際に、最も手間がかかる作業の1つがサービスの粒度の決定。この手間を大幅に省くことができる」と日本オラクルアプリケーションSC統括本部アプリケーションテクノロジー部の丹羽勝久ディレクターは強調する。