地球温暖化の影響は日本にも迫りつつある。日本の気温は2100年に4℃近く上昇し、夏の降水量は多い所で約20%増加する。熱中症患者が増え、水害リスクが高まる。環境省は昨年10月、地球温暖化影響・適応研究委員会を設置し、2020~30年の日本での影響と適応策の検討を始めた。成果は6月に発表される予定だ。これらの研究を踏まえ、本シリーズでは気候や農業、水害、水資源、生態系などに分けて、日本に迫る温暖化の影響と適応策を紹介する。

地球温暖化が進む中、CO2を削減する緩和策を講じる一方で、社会や産業への影響を正確に把握し、適応策を施すことが急務となってきた
地球温暖化が進む中、CO2を削減する緩和策を講じる一方で、社会や産業への影響を正確に把握し、適応策を施すことが急務となってきた

 昨年、日本人は過去に例のない夏を体験した。岐阜県多治見市では8月16日に最高気温40.9℃を観測。1933年に山形市で40.8℃を観測した国内最高記録を74年ぶりに塗り替えた。全国153の観測地点のうち20地点で過去最高気温を更新した。猛暑の中、熱中症患者も急増。5~9月の患者発生数は東京都だけでも1268人に上り、調査を開始した2000年以降最多となった。

 「地球温暖化が進めば、2040年には都内だけでも熱中症患者が最大5000人に増える」と、国立環境研究所の小野雅司・総合影響評価研究室長は予測する。日本ではこれまで遠い将来の出来事だった温暖化の影響が、猛暑や熱中症の増加によって身近に感じられるようになってきた。

 温暖化は日本にどんな影響を及ぼし、それに対してどんな適応策を施したらよいのか。「生命や経済活動を守るために、具体的な適応策を論ずる時期にきている」と小野室長は警告する。

 国も本腰を入れて研究に乗り出した。環境省の地球環境研究総合推進費では、複数の研究機関が共同で、温暖化の影響を予測する科学研究を進めている。第1期は今年3月で終了し、4月以降に成果が発表される。

 この研究成果を含む複数の科学的知見を基に、日本はどんな適応策を選択すべきか指針を示す局長諮問委員会「地球温暖化影響・適応研究委員会」が昨年10 月に環境省に設置された。食料、水環境・水資源、自然生態系、防災・沿岸大都市、健康、途上国というテーマに分けて、2020~30年の影響と適応策を示すのが狙いで、6月ごろに成果が発表される。