前回までは、基本的にハードウエアの新規導入や入れ替えの際に実行可能なグリーンIT対策を紹介してきた。だが、そうしたタイミングは、通常は3~5年に一度しかない。

 しかし新たにハードを導入せずに、既存のIT機器のままでも消費電力を減らすことは可能だ。何のことはない。無駄な電気は消せばよい。

 電気の無駄遣いが最も多いのは、クライアント・パソコンだろう。夜間や外出時などにパソコンの電源をきちんと切るだけで、1台当たり年1000円以上の削減が見込める。社内に数千台のパソコンがある大企業なら、トータルでは無視できない金額になる。「全社的に取り組むことで社員のグリーンITに対する意識を高める効果も期待できる」(富士通 環境技術推進統括部の川口清二プロジェクト課長)。

 富士通グループの富士通エフサス中部本部はパソコンやプリンタの夜間電源オフを徹底したところ、年間で約1万300kWhの消費電力を削減できたという。これは平均的な家庭2世帯の年間消費電力に相当する。節約できた電気代は年20万円強とそれほど大きくはないが、グリーンITとしての投資対効果はまずまずといえる(図6)。

図6●パソコンの電源オフを徹底すると、1台当たり年1000円以上の電力コストを節約できた
図6●パソコンの電源オフを徹底すると、1台当たり年1000円以上の電力コストを節約できた
富士通エフサスの中部本部が2007年に午前0時から6時までの節電に取り組んだ事例に基づく
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 富士通エフサス中部本部が、オフィスに約700台あるパソコンやプリンタの夜間稼働状況を監視し始めたのは昨年1月のこと。その時点では、150台以上のパソコンやプリンタの電源が夜間でも付けっぱなしだった。

 当初の2カ月間は、夜間の電源オフを社内に呼びかけてもあまり効果がなかった。そこで同社は富士通製の監視装置「System Defender Box」を使って、パソコンなどの稼働状況をチェック。電源が付けっぱなしの機器に「ECOイエローカード」を張り付けたり、詳細なログを部門長に報告したりすることで、社内の省電力意識を少しずつ高めた。こうした地道な取り組みの結果、半年後には電源オフの習慣が社内に定着した。

サーバー配置の見直しで数百万円を節約

 IT機器を買い替えない前提でも、効果的に電力コストを削減する方策は、ほかにもある。サーバーの配置を見直して冷却効率を高め、空調にかかる電気代を削減することだ。規模にもよると、コスト削減効果は数百万円に達する可能性もある。

 ただし空調コストをどの程度削減できるかの試算は簡単ではない。サーバー室の広さや空調設備の状況、収容するサーバーの種類や台数などさまざまな要素が影響するからだ。

 NECフィールディングが手がけた例では、年間の空調コストを220万円削減できた(図7)。この顧客はサーバー室に約130本のラックを設置。10台の空調機を使って冷却していたが3~4カ所の熱だまりが発生しており、冷却効率が悪かった。そこで同社は温度状況を把握した上で、空気漏れを防いだり、ケーブルを整理したりする作業を実施して、熱だまりを解消。1台の空調機を止めても、同じ室温を保てるようにした。その分の電気料金を丸々削減できたわけだ。

図7●空調の見直しも数百万円のコスト削減が期待できる
図7●空調の見直しも数百万円のコスト削減が期待できる
NECフィールディングが手掛けたケース。1年間で空調機1台分の約220万円の電気代を削減したという。サービス利用のコストは期間や規模によって上下するが、このケースでは熱シミュレーション費用は200万円以上、改善作業に約200万円程度が目安

 この顧客はサーバー室の規模も大きかったため、専門業者に作業を依頼した。NECフィールディングによると、この規模なら調査と熱シミュレーションに 200万円以上、改善作業にも200万円程度かかるという。すでに適切な温度管理ができているサーバー室なら、コスト削減の余地が残っていない可能性もあるが、検討してもよいだろう。