最近の自動車は,これまでの連載で紹介したLINCANといった車内LANを用いて,複数のECU(electronic control unit)を協調制御させることにより,快適性や安全性を向上させてきました。これからの車にもさらなる快適性や安全性が求められており,そのための手段の一つとして,X-by-Wire(エックス・バイ・ワイヤ)の研究・開発が進められています。

 X-by-Wireとはどのような技術なのでしょうか?連載第1回の「車内LANって何だろう」でも触れましたが,例えばステアリングに用いられるシャフトやギヤなどの従来の機械的機構を用いた制御を,車内LANと電子制御で実現するシステムのことです(図1)。X-by-Wireを導入すると,機械的機構を削減することができるため,車両の軽量化や車内空間の拡大が実現でき,かつ,電子制御によりシステム全体の安全性を向上させることができます。

図1●X-By-Wireシステムの一例
図1●X-By-Wireシステムの一例
ステアリング・バイ・ワイヤの例を示した。

 このX-by-Wireを実現するには,現在の制御系の車内LANとして用いられているCANに比べ,きめ細かい制御を実現するためのリアルタイム性を有し,より高速かつ信頼性の高いネットワークが必要になります。こういった要求を満足する車内LANとして注目されているのがFlexRayです。

 FlexRayは「FlexRayコンソーシアム」によって標準化が進められている通信プロトコルです。その仕様書は同コンソーシアムのWebサイトにアクセスして,名前やメール・アドレスなどを登録すれば,誰でも無償で入手できます。