サイオステクノロジーは、40種類以上ものOSS(オープン・ソース・ソフトウエア)を対象にしたサポート・サービス「OSSよろず相談室」を 2007年6月に開始した。あらゆる組み合わせでOSSを利用できるよう、ユーザーを支援する。Red Hat Linuxのサポート業務で培ったノウハウや社員が自力で獲得したスキルを集結させた。
数多くのOSSを対象に、これだけ制約の少ないサポート・サービスは国内では唯一といっていいかもしれない。OSSよろず相談室が対象とする OSSは、OSやミドルウエアを中心に40種類以上。これらのソフトを原則、あらゆる組み合わせでシステム構築に利用できるよう支援する。
しかもソフトのバージョンに原則、制限は設けない。OSS活用のノウハウ提供のほか、トラブル発生時にはソースコードを調査。オプションでバグ修正のパッチを独自に開発・提供する。ユーザーの大半はソリューションプロバイダだという。
山﨑 靖之●執行役員CTO(最高技術責任者) |
OSSをシステム構築で活用する際に悩ましいのが、多様なソフトを組み合わせた時に起こるトラブルだ。こうした課題を解決する一つの手段が、特定の OSSをあらかじめ組み合わせ、動作を検証して販売する「スタック」である。安価、手軽にOSSを導入できる利点を売り物に、他社がこの2~3年で相次ぎ投入した。SIの現場で活用が始まっている。
サイオスの山﨑靖之執行役員CTOは「スタックは多くのユーザーに向くが、すべての需要を満たせない。SIの現場では、OSSだから『自由に組み合わせたい』という声があることが分かった」と語る。よろず相談室は、この気付きから生まれた(図)。
図●「OSSよろず相談室」のコンセプトと「スタック」との違い [画像のクリックで拡大表示] |
「あえて旧版を使いたい」
山﨑CTOがサービスを発案する契機になったのは、1999年からRed Hat Linuxの上位パートナーとして、製品販売と合わせて提供していたサポート業務だ。同梱ソフトのサポートを手掛けるうちに「特定のソフトだけ新版、旧版と組み合わせて使いたい」といった声が意外に多いことが分かった。
野宗 貴史● OSSテクノロジーセン ター グローバルサービスグループ グループマネージャー |
例えば「他のソフトはそのまま、データベース(DB)ソフトの『MySQL』だけ性能が向上した最新版に移行したい」というユーザーがいる。一方で「OSはセキュリティが高い最新版を使いたいが、DBなど他のOSSはバグが枯れた旧版を使えないか、という相談も多かった」とOSSテクノロジーセンターグローバルサービスグループの野宗貴史グループマネージャーは語る。
サイオスはRed Hatのサポートに限らず、こうしたユーザーのトラブル解決を有償で個別に請け負っていた。OSSを普及させることを重視した取り組みである。
2005年頃になると、OSSを使うITサービス企業2社と継続的なサポート契約を結んだ。これがよろず相談室の原型となった。山﨑CTOは「これだけ『OSSの自由な組み合わせ』に需要があるなら、分かりやすいメニューでサービス化すれば、もっと利用者が増えるはずだ」と考えたのだ。
サイオスはRed Hat事業と併行して、OSSのSI案件を数多く手掛けており、トラブル解決のノウハウを蓄積してきた。加えて、社内の技術者が個人的に培ってきたOSSのスキルも、サービス化に踏み切る原動力になった。
サイオスにはLinuxなど主要OSSのコミュニティに中核の開発メンバーとして参加する「コミッター」が何人もいる。「社業だけでなく、個人の時間を割いてコミュニティに参加したり、スキルを蓄積したりする技術者が数多くいる」(山﨑CTO)。
社内の技術者が持つノウハウを調べると、トラブル解決に対応できるOSSは主要分野を網羅し、40種類以上あることが分かった。このため「新たな投資をせず、社内のスキルを集結させただけでサービスができた」(山﨑CTO)。
よろず相談室のユーザー数は未公表だが、商談も含め順調に伸びているという。日本にOSSが根付くか、重要な役割を担っていることは間違いない。