前回に続き、プロジェクト・リーダーのメンバーに対する責務を取り上げる。リーダーには、メンバーの能力を最大限引き出せるような、オープンで伸びやかな職場作りが求められる。

246日目●ちょっとした妥協が崩すチームの質

 チームワークが良いチームを編成するためには、オープンなチームを作ることが大事であるが、メンバーに勝手にやらせておけば、いい雰囲気が出て仕事が順調に進むと誤解していては困る。リーダーは、言うべきことはきちんといい、指導すべきことは指導し、しかるときはきちんとしからなければならない。チームは何と言っても質の高い仕事を達成する必要があるからだ。

 リーダーとしては、正しい仕事のあり方を徹底すべきである。もしもメンバーが正しく仕事を進められないなら、決して妥協せず、正しい仕事がやれるまで、繰り返しやり直させるべきだろう。いい加減で不的確な作業を、「仕方ない」と妥協してしまうと、チームの質が取り返しのつかないレベルにまで落ち込んでしまうだろう。



247日目●困っても助けにならぬ無駄上司

 組織においてプロジェクトが順調に進んでいる限り、リーダーはメンバー任せで問題ない。しかし、いったん問題が起これば、リーダーがメンバーの先頭に立って取り組まねばならない。特に部下が困って問題点を報告してきたときは適切な指示や指導が求められる。「安く作れ」「早く作れ」「品質を上げよ」「失敗するな」といった当たり前の指針を繰り返すだけで、困っている部下に何の具体的アドバイスも出せないようではリーダーとして問題だ。

 どうしても自分で適切な対応策を提示できないならば、せめて、その分野のプロを紹介したり、話をつないだりくらいのことは是非やるべきである。あるいはチームで対策を議論できるよう導けないようでは到底リーダーとは言えない。困ったときに助けにならないリーダーほど、世の中で不要で無駄なものはない。



248日目●イヤだった上司の真似をなぜするの

 後輩から、「プロジェクト・リーダーになることになったが、プロジェクト・リーダーはどうあるべきですか」という質問を受けることがある。世の中にはリーダーのあり方を書いた著書があふれているので、気に入った本を読めばいいとは思うのだが、すべてのリーダーが本に書かれたような理想的なリーダーであるわけはないし、誰もが理想的なリーダーになれるわけでもない。

 そのため上記のような質問に対しては、「幸いにも尊敬できるリーダーに仕えた経験があれば、そのリーダーをモデルに行動することが具体的で分かりやすい。逆に、困ったリーダーに仕えたことがあれば、その人のやり方のなかで、イヤだと感じたことを避ける努力をすれば、きっと部下は付いてきてくれるだろう」と言っている。

 ところが、リーダーになったとたん、結果的にかつてイヤだった上司と似た行動を取り、新しい部下に嫌がられる例がよく見られることは困ったことである。



249日目●やって見せやらせて添削するがよし

 リーダーは具体的開発や作業は部下に任せるのが原則だ。だが、全く新しい開発や設計では、基本構想すら固まっていない段階から自らがドキュメントや図面を書かざるを得ないことがある。このとき書いた文書や図面は、新人のいい勉強材料になるので真剣に取り組みたい。

 筆者が新人のころ、何をすればよいのか分からず、先輩が書いた図面や文書を見せてもらったが、その素晴らしさに大変感動した記憶がある。やはり、先輩が部下に優れたモデルを示すことが最も役立つ教育になる。

 さらにプロジェクトの概略がまとまってくると、サブシステムごとに分割して部下に仕事を任せることになるが、任せても時々は出来具合を見てまずいところを直す具体的な添削指導をやるべきである。設計のような知的活動はルールだけでできることではないし、一義的な解があるわけではないだけに、どうしても添削的指導が必要だ。