前回に続き、プロジェクト編成の諸問題を取り上げる。目前の仕事を見てメンバーの配置を考えるだけでなく、新人や後継者の育成についてもローテーションを含めて真剣に考えることが、チームワークの強化につながってくる。

260日目●まとめ力あるとは限らぬ力持ち

 技術的に優れていても管理力に欠ける設計者がいる。大きなプロジェクトはいくら技術力があっても、自分一人で、全部をまとめることはできないため、どうしても取りまとめ力や管理力が必要になるのは当然だ。ほとんどのSEや設計者は、技術的経験を積むに従って、管理力も何とか付けられるように指導していかねばならない。

 しかしなかには、どうしても管理には向かないが、技術面では優れた力を持つ人材もいる。こういう技術者に無理に管理させると、部下の仕事がやりにくくなり、やがてはモラールの低下につながってしまう。こうした人材は、本来の良さを十分発揮してもらえるよう、管理面は別のスタッフが補う工夫をしたほうが、組織全体の効率がよくなるし、良いシステム設計ができるようになる。



261日目●露払い殿(しんがり)もいて隊進む

 プロジェクト・メンバーのなかにあって、先頭に立ってチームを引っ張る先導役、露払いが必要であるのは当然として、最後をきちんとまとめる殿役も必要である。大きなプロジェクトでは、設計担当の技術者だけでなく、メンバーの愚痴や悩みを聞いてあげるようなベテランが大事な役目を果たしており、いろいろな性格を持つ多様なメンバーでチームを構成できることが、プロジェクト成功には大事である。

 日本でも実力が強く意識されるようになり、年齢の価値は減ってきてはいるが、長い伝統もあるだけに、年齢も意識した人材配置はそれほど悪いわけではない。実力がほぼ同じなら、ベテランがまとめたほうが、まとまりやすいのも事実である。「年齢も実力のうち」と言える。

 各メンバーが、自分の得意とするところを最大限に生かせるようなチームをぜひ構成したいものである。



262日目●仕事大事それでもあんたなお大事

 プロジェクトを成功裏に遂行するためには、仕事に合わせて適切なメンバーを配置するのは当然としても、メンバー一人ひとりがそのプロジェクトに参加してよかったと思えるように、メンバーの成長にも役立つ配置を考えたい。ただ工数不足の埋め合わせだけでは困るのである。

 しかし、顧客第一、プロジェクト第一という原則を守るため、仕方なくそのメンバーにとってありがたくない配置をせざるを得ない場合も出てくる。そんなときには、やむを得ない対応だったことを当該メンバーによく話し、少なくともリーダーは「我々のことを考えてくれている」と感じさせる程度の気配りが必要だ。

 メンバーを大事にし、彼らにとってやりがいのあるチームを形成することが、顧客満足のさらなる向上につながるのである。



263日目●成功をさせればさらに部下育つ

 「失敗は成功の母」とよく言われるように失敗経験は貴重だ。だが、失敗するよりも成功したほうがよいのもまた事実である。こと仕事やビジネスに関する限り、失敗は当事者のみならず、組織に対しても甚大な損失をもたらす。逆に成功は組織に直接の利益をもたらすうえに、成功を果たした当事者に自信という大きな成果をもたらす。

 全員で失敗事例を語り合うより、成功事例を語り合うほうが楽しく、かつ啓発されることも多いはずである。まさに、「成功は成功の母」なのだ。「失敗も成功の母ではあるが、成功は成功のより偉大な母である」と言える。

 部下に難しい仕事を与えて頑張らせるとき、もし危ない兆候が見えてきたら、失敗も貴重な経験だから、「じっと見ておこう」という戦略もある。だが、何とか大きな失敗にならないような的確なアドバイスを与えたほうが、部下のさらなる成長につながるはずである。