写真●追加されたカラー・バリエーション・モデル「Eee PC 4G-XU」。バッテリ容量が約15%減っている。ただし,バッテリの変更により,前モデルより10g軽く(910g)なっている。
写真●追加されたカラー・バリエーション・モデル「Eee PC 4G-XU」。バッテリ容量が約15%減っている。ただし,バッテリの変更により,前モデルより10g軽く(910g)なっている。
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 4万円台で購入できるULCPC(超低価格パソコン)として,国内で高い人気を継続している台湾ASUSTeK Computer社の「Eee PC」。2008年1月に出荷された「4G-X」に続いて,カラー・バリエーション・モデル「4G-XU」が,2008年5月3日に出荷開始された。

 従来の4G-Xは黒と白の2モデルだったが,4G-XUはカラフルな青,緑,ピンクの3モデルになった(写真)。また,4G-XUは,4G-Xから大幅なハードウエアの変更はなく,4G-Xと併売されることになっている。つまり消費者は,5色の中から好みの製品を選べるようになる。

 しかし,スペックをよく見ると,実は大きく異なる部分がある。

ニュース・リリースを見てみよう

 4G-XUのニュース・リリースでは,4G-Xとの違いとして,OSなどのシステムが2次記憶装置のSSD(フラッシュ・メモリー)を占有するサイズが小さくなったことをアピールしている。具体的には,2.3Gバイトから1.7Gバイトに減少させた。

 ASUSTeKは,占有量を減少させた具体的な方法を公表していない。ただ,機能を削ることなく,空き容量を増やしたとしている。また,ASUSTeKのWebページにある「よくある質問」で,4G-XでSSDの空き容量を増やす方法として,Windows XPが標準で備える「システムの復元」のデータ領域を狭めたり,「ドライブの圧縮」を行ったりする方法を紹介している。

 ASUSTeKは,ログ・ファイルや一時ファイルなど,動作に影響を与えない不要なファイル群を削除したり,Webページで紹介した方法を施したりすることで占有量を減少させたと思われる。いずれの方法にせよ,これはハードウエアの違いではない。

安定供給のために低容量のバッテリを採用

 リリースには書かれていないが,ハードウエアで大きく変わった部分がある。それはバッテリだ。

 前モデルの4G-Xでは,バッテリの電源容量は5200mAhだったが,4G-XUは4400mAhと約15%減っている。バッテリ駆動時間は,それぞれ「3.2時間」,「3時間」となっている。

 国内の販売関係者によると,4G-Xのバッテリは国内の電池メーカーの製品が使われているが,電池メーカーの工場の事故により,ASUSTeKは予定数を入手できなかったという。その影響が,2008年1月の出荷から4月上旬まで続いた4G-Xの品薄につながった。4G-XUは国内で安定供給を行うために,4400mAhに変更したと考えられる。

 5200mAhと4400mAhの違いは,バッテリ駆動時間で比較すると,3.2時間から3時間とわずか6%の減少である。しかし,北米で販売されるEee PCのスペックを見ると,5200mAhのバッテリが採用されているモデルはバッテリ駆動時間が3.5時間であるのに対し,4400mAhは2.8時間となっている。

 4G-Xは,北米モデルより駆動時間が短いのに,4G-XUは北米モデルより駆動時間が長くなっている。ASUSTeKはバッテリ駆動時間の算定方法を公表していないため,詳細は分からないが,4G-XUのリリースにあるバッテリ駆動時間は,本当に3時間なのだろうか,という疑問が湧く。

 ちなみに,ASUSTeKは,4G-Xで5200mAhのバッテリを採用した理由を「国内ユーザーの使い方を考えると3時間の駆動時間が必要だった」としていた。

バッテリ駆動時間を重要視しないASUSTeK

 ASUSTeKは2008年4月に,香港で液晶ディスプレイを8.9型に大型化した「Eee PC 900」を発売した。このモデルでも,搭載バッテリについて問題が起きている。

 ASUSTeKは,Eee PC 900の発売に先駆けて,各メディアに評価用のEee PC 900を貸し出した。その評価機のバッテリ容量は5800mAh。ところが,実際出荷された製品のバッテリ容量は,4400mAhだった。

 海外メディアの報道によると,ASUSTeKは当初「4400mAhが標準であり,評価機の5800mAhが間違い」とコメントしたとしている。ところが,ユーザーからのクレームが多く,1週間経たずして5800mAhのバッテリに交換するサービスを開始すると発表した(この件に関するニュース・リリースは,当初,香港のASUSTeKのWebページに掲載されていた。しかし,5月12日現在,削除されている)。

もっと消費者のことを考えて

 バッテリ駆動時間は,携帯ノートを選ぶときの重要な判断要素だ。しかし,4G-XUのニュース・リリースを見ても,4G-Xからバッテリ駆動時間が減少したことにすぐに気付かないだろう。

 4G-XUと4G-Xは併売されている。5月12日時点の大手量販店の販売価格は,4G-Xが4万4800円であるのに対して,4G-XUは4万9800円である。カラフルになったきょう体と引き換えに,高い金額を支払って,バッテリ容量が削られることを気付かずに購入してしまう消費者は結構いるのではないだろうか?