この前の土曜日,妻が3歳の息子を膝の上に乗せ,いろいろとおしゃべりしながらパソコンに向かっていた。筆者が「何をしているのか?」とのぞき込むと,それに気付いた妻が,「このポケモンのWebサイトは,よくできているのよ」と感心したように話す。ポケットモンスターが大好きな息子も,楽しげである。

 2人が見ていたのは,「ポケモンだいすきクラブ」というWebサイトだ。妻の会社でこのサイトが話題に上がり,早速アクセスしてみたらしい。ユーザー登録をしてログオンすると,ポケットモンスターが登場する絵本やクイズ,ゲームなど,さまざまなコンテンツを楽しめるのだという。

 クイズやゲームでポイントを稼ぐと,サイト内で「お買い物」をすることもできる。買い物といっても,登録ユーザーの「アバター」に着せる服やアクセサリーなど,大人から見ればたいしたものではない。だが,「ポイントを貯めてからお買い物をする」という仕掛けが,しつけの面でもメリットがあるように思われた。まさに我が家では,やたらとオモチャを欲しがる息子に財布を持たせ,「お手伝いをして,お金を貯めてから買い物しようね」と教えている最中だったからである。

 もちろん,このサイトには新作映画の予告やポケモン・グッズを宣伝するコンテンツもあって,そういう情報にも息子や妻は大いに興味を示している。まんまとWebサイト側の戦略に乗せられているような気もしないではない。しかし,息子や妻がおしゃべりしながら楽しそうに遊んでいるのだから,「もっとポケモンのオモチャが欲しい!」と言い出さない限りは結構なことだと思っている。

ブロードバンド時代の新しい「遊び」

 ここで少し驚いたのは,たどたどしい手つきではあったが,3歳の息子がマウスを動かし,矢印のボタンをクリックして絵本のページをめくれるようになっていたことだ。少し教えただけで,わりとすぐできるようになった。まさに「遊びながら覚える」である。その過程で,マウスを右クリックすると見慣れぬプルダウン・メニューが出てしまうことや,ウインドウの最小化ボタンをクリックするとウインドウが閉じてしまうことなども知った。本当に超初歩的な操作ではあるが,「もしかして,これはITリテラシー教育になるのでは?」という気がした。その後,同じように遊んでみたら,また少しだけマウス操作がうまくなった。筆者は今,「次の週末,マウスでどんな遊びができるかな」などと思いをめぐらせている。

 これまでにも,息子にパソコンの使い方を教えようとしたことはあった。だが息子は,うまく操作できないと,すぐ「パパ,やって」と,しり込みしていた。後から思えば,やはり「教えよう」という親の気持ばかり強くて,息子はそれほど楽しくなかったのかもしれない。今回,「右クリック」のような失敗をしながらも,めげずにマウスを操作できたのは,「大好きなポケモンで遊ぶ」という効果が少なからずあったのではないか,と想像している。

 こんな話を会社の同僚にすると,「今の子供は,3歳からWebコンテンツで遊ぶんだねぇ」という反応が返ってきた。同僚の子供は現在14歳で,その子が3歳だったころ,まだADSLのようなブロードバンド環境はなかったのだ。当時は,パソコンに子供用のソフトをインストールして,パソコンに親しませていたという。

 振り返ってみれば,「ブロードバンド元年」と言われたのは2001年ごろ。そのとき,ADSLの回線速度は下り8Mbps程度だった。その後,回線速度が上がり,ポケモンだいすきクラブのようなリッチなWebコンテンツを楽しめるようになったのは,比較的最近のことだ。

 3歳の子供にも,それなりにいろいろな遊びがあるが,Webコンテンツもその遊び道具の1つとして存在感が増しているのかもしれない。遊びを通して,少しずつでもITリテラシーが身に付くのだから,お得な感じもする。子供がWebコンテンツばかりに熱中するようだと心配だが,ほどほどに楽しむぶんには結構なことである。