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写真1●テレビのそばにKX-WP800の無線LANルーター(右)を設置。左がSkype搭載の携帯型電話機
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 2008年4月28日の週に,米国・ラスベガスで開催された「Interop Las Vegas」を取材するために渡米した。その際,ホテルでの連絡用にパナソニック コミュニケーションズの「Skype」対応Wi-Fi電話機「KX-WP800」(関連記事)を使ってみたので,今回はその体験を報告しよう。

 まず,このKX-WP800について簡単に紹介する。KX-WP800は,携帯型の電話機と小型の無線LANルーターのセット製品。電話機にはIEEE802.11bの無線LAN通信機能とSkypeソフトウエアを搭載しており,無線LANルーターや公衆無線LANサービスなどを通じてSkypeによる通話ができる。

 今回,これを海外出張に持っていったのは,ホテルのインターネット回線を使って安価な連絡手段が確保できると考えたからである。Skype同士の無料通話よりも,SkypeInやSkypeOutを利用して日本の固定電話や携帯電話と低料金で通話することを狙った。

出発前にフュージョンから050番号を取得

 下準備として,まずはフュージョン・コミュニケーションズの「フュージョンでSkype」サービスを契約した。これは,フュージョンのIP電話サービス(050番号)を契約することで,この050番号あての電話をSkypeに着信(SkypeIn)させたり,Skypeからフュージョン網を利用して050番号のIP電話として発信(SkypeOut)したりできるサービスである。月額基本料は399円だ。

 フュージョンのIP電話サービスからNTT加入電話への通話料は3分8.4円,携帯電話への通話料は1分16.695円。ただしSkypeからフュージョン網を経由して発信するには,「フュージョンでSkype」専用のソフトウエアを使う必要がある。当然のことながら,KX-WP800の電話機に同ソフトはインストールできない。このためKX-WP800では,Skypeがオリジナルで持つSkypeOut機能を利用する。通話料金は,プリペイド契約で固定電話あてが1分2.66円,携帯電話あてが1分17.5円となる。

 一方,「フュージョンでSkype」への通話料は一般的な050番号への料金となる。具体的な金額はサービスによって異なるが,例えばNTT加入電話のフュージョンIP電話への通話料は3分11.025円。さまざまな割引サービスで国際通話料が安くなっているとはいえ,国際電話料金としては,やはりこの料金は格安と言える。また携帯電話ほどの機動性はないものの,ホテルのオペレータなどを介さず直接本人につながる点は,国際電話をかける人の心理的な負担を減らすことにもつながるだろう。

 なお4月22日からSkypeは,月間で最大1万分の発信通話が可能な月額プランを開始している(関連記事)。このプランを契約すると,050のSkypeIn番号も同時に取得可能だ。料金は,世界34カ国・地域のうち1カ国・地域の固定電話(一部は携帯電話も)に発信可能な「1ヶ国限定プラン」が月額695円とかなりお得。ただ筆者は,この新サービス開始前に「フュージョンでSkype」を契約したため,今回はこのプランは利用しなかった。

 「フュージョンでSkype」を契約した筆者は,出発前に自宅のネットワーク環境でテストを実施した。電話機にSkype名とパスワードを設定しておけば,電話機を起動するだけで自動的にSkypeにログインできるようになる。自宅の固定電話や携帯電話とSkypeとの間の発着信も問題なし。テストを無事に終えた筆者は,KX-WP800をスーツケースに詰め込みラスベガスへと旅立った。

いきなりトラブル,Skype電話機がネットにつながらない

 ラスベガスのホテルに着き,荷物を整理した後にさっそくネットワーク環境を整えた。筆者が宿泊したホテルでは,インターネット接続料として1日当たり13.99ドルがかかる。日本のビジネスホテルではインターネット接続が無料のところも少なくないが,ラスベガスのホテルでは有料が一般的なようだ。

 部屋に装備されているLANケーブルにKX-WP800の無線LANルーターをつなぎ,まずは無線LAN経由でパソコンをインターネットに接続してみた(写真1)。ブラウザを立ち上げ,Webページを見ようとするとホテルの認証画面が現れる。そこには,24時間,1部屋あたり,パソコン1台あたり13.99ドルという値段が提示されており,「了承」ボタンを押すことで自由にインターネットが使えるようになる。

 ここまでは順調に進んだ。ところが,Skype電話機を立ち上げても,Skypeのログインがうまくいかない(写真2)。ここでハタと,先ほどの認証画面の注意書きを思い出した。「パソコン1台あたり」と書いてあったではないか。つまり,Skype電話機も別のパソコンとして認識されているのではないかということである。しかしSkype電話機にはWebブラウザが搭載されていないため,Skype電話機で認証を受けることはできない。

写真2●当初は接続できないトラブルが発生   写真3●無理やり接続に成功したが…
写真2●当初は接続できないトラブルが発生
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  写真3●無理やり接続に成功したが…
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 ここで一つの実験を試みることにした。パソコンの無線LANアダプタのMACアドレスをSkype電話機のそれに付け替えてみて(いわゆるMACアドレス詐称),認証を受けるとどうなるかという実験である。パソコンの識別には,おそらくMACアドレスを使っていると思われたからである。Skype電話機の電源を落とし,無線LANアダプタのMACアドレスを変更してパソコンを再起動。その状態でネットに接続してみると,案の定,再び認証画面が現れた。ここで「了承」ボタンを押し,パソコンの電源を落としてから,Skype電話機の電源を入れてみる。そうすると,今度はあっさりとSkypeのログインが成功した(写真3)。

 前述のようにホテルのネット接続は24時間で13.99ドル。パソコン2台分とすると27.98ドルが必要となる。また,このような“裏ワザ”を毎日繰り返すこともためらわれる。こうしたWeb認証が必要なホテルでは,KX-WP800は使えないということか。こう思った瞬間,筆者は重大なミスを犯していたことに気付く。