ウィルコムはWindows Vistaが動くPHS内蔵小型パソコン「WILLCOM D4」を7月中旬に発売する。同社はWindows Mobile搭載のスマートフォンも販売済みだが,Web表示の互換性や対応アプリケーションの数などが不足していた。パソコン用OSがそのまま動く汎用性の高い端末を投入し,新たな市場に打って出る。
「D4」(写真1)とは,電話機,データ通信カード,スマートフォンに続く第4のデバイスという意味を込めた名称。「ウィルコムがこれまで手がけてきたモバイル機器の概念を超える新しい製品」(喜久川政樹社長)と位置付ける。
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写真1●Windows Vistaが動く約20cmの小型端末 米インテルが携帯機器向けに開発した新CPUを採用することで小型化した。別売でクレードルやBluetoothハンドセットも用意した。 [画像のクリックで拡大表示] |
D4は機能的にはPHS通信モジュール「W-SIM」を組み込んだ小型パソコン。PHSの音声通話機能は備えるものの通話はOS上で処理され,サスペンド時などは音声着信ができない。
同社が優先したのは新しいユーザー層の掘り起こしである。PHS通信機能と小型化によって,一般のノート・パソコンよりもモバイル用途を際立たせ,Windows Vistaを搭載することでパソコンの使い勝手を維持した。例えば,Windows MobileのWebブラウザでは動作しなかったActive Xコントロールが動作する。
さらに,W-SIMを組み込むことでノート・パソコンでは容易には実現できない「リモートロック」機能に対応。紛失時の情報漏えい対策を考慮した。W-SIMが待機電力で通電していれば,ユーザーがWebサイトなどから出したロックの指示をD4が自動受信。紛失した端末を取得した第三者はWindowsにログオンできない。
横幅20cmにPCの機能を収める
ハードウエアの開発を手がけたのはシャープである。米インテルが4月に発表した携帯機器用プラットフォーム「Centrino Atom」を採用。新書版を若干大きくした程度の横幅約20cmの本体にパソコンの機能を収めた。タッチパネルでペン入力ができるほか,画面の横にはポインタを操作するタッチパッドも備える(表1)。
表1●WILLCOM D4の主な仕様 | ||||||||||||||
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価格はPHS端末としては高いが,小型のノート・パソコンとしてみれば妥当といえる。2年間の契約を条件とした割引プランを考慮すると,ユーザーが支払う金額は合計で約9万円(表2)。
表2●販売価格と利用料金の例(購入後24カ月) | ||||||||||||||||||
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ウィルコムではD4の販売目標を今年度は5万~10万台としている。この数値は同社のW-ZEROシリーズ1機種の累計販売台数の半分程度である。
搭載するW-SIMの伝送速度は最大204kビット/秒。メガビット・クラスの実効速度が期待できるHSDPA(high speed downlink packet access)サービスなどと比べて見劣りするのは否めない。新ジャンルの製品がどれだけのユーザーを引き付けられるかが注目される。