園田 誠(そのだ まこと)
筆者  1965年愛知県生まれ。多摩美術大学卒業。石橋を叩いて渡るA型。美術大学卒業のキャリアを活かして,あちこちでWebデザインの原稿とか書くくせに,サイト全部のHTMLをマメに書くのが面倒だから自分のサイトもブログ・システムに変えてしまった不精者。つまり今回のテーマであるWeb APIを語るには,まさにうってつけのWebプログラム系フリーライター。http://www.japan.xitami.net/

 ブログパーツにはいくつか定番があります。例えば時計。誰かのブログを見ていて,今の時間が気になるということはまずないんですけど,でもとりあえず時計。自分でブログをやっていると,つい置いちゃうんですよね,時計。

 そして時計に次ぐ定番と言えば,アクセス解析です。アクセス解析そのものは,ブログの脇に大きく何かを表示するということはほとんどなく,たいてい小さな画像が埋め込まれているか,アクセス・カウンタの形体を取っています。

 アクセス解析では,何日の何時に何人が見に来たかといった情報がわかります。ものすごく細かい解析をするものもありますが,個人ブログの開設者にとって,閲覧者がどんなブラウザを使っているのか,どのドメインからのアクセスが多いのかといった情報は「フーン」と流してしまうレベルかもしれません。

企業・団体特化型アクセス解析

 通常のアクセス解析は,閲覧者全員を対象としています。ところが,世の中いろいろあるもので,企業,団体などの組織からのアクセスに絞り込んだ解析という一風変わったアクセス解析をしているところを見つけました。それが今回ご紹介する「なかのひと ベータ版」です(図1)。

図1●「なかのひと ベータ版」のトップページ
図1●「なかのひと ベータ版」のトップページ
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 サイト名の「なかのひと」という命名からして,ネットワーク・スラング(ゲームなどでキャラクタを操作する本人,匿名掲示板で投稿している本人などの意)であり,微妙な怪しさが漂っていて一風変わっています。ネタ系の解析なのか?と勘ぐられるかもしれません。しかしその実態は,かなりしっかりとした特化型解析サイトなんです。

 「なかのひと」のアクセス解析サービスは,プロバイダ経由と想定される.ne.jp系ドメインからのアクセスは一切無視して,その他の.co.jpや.com,go.jp,ac.jpなどの組織,団体,学校ドメインからのアクセスのみを対象とします。海外からのアクセスも統計対象になりません。

 したがって,注意していただきたいのは「なかのひと」の解析結果は,ブログのすべてのアクセスをカウントするわけではないということです。よくあるカウンタ型のアクセス解析とは根本から異なります。

 パーツを設置したブログに対して団体/組織からアクセスがあった場合,「なかのひと」のサイトにある自分専用のページでは,どの団体からアクセスがあったのかと,その団体の位置が日本地図上に表示されます。地図と一緒にYahoo! Mapsを使って,航空写真でその団体の建物も表示します。

 自身の行動に照らし合わせて考えてみれば案外当たり前のことですが,個人のブログでも(どう考えても仕事の役に立たないサイトだったとしても!)結構昼間に企業ドメインからのアクセスがあります。名前の通り“団体の中の人”からのアクセスが把握できるというのが「なかのひと」のサービスの特徴です。

 利用を開始するには登録が必要です。登録は「なかのひと」のトップページ(図2)で行います。登録内容は極めてシンプルです。必要なのは,(1)名前,(2)メール・アドレス,(3)解析タグを設置するサイトのURL──の三つだけです。

図2●「なかのひと」登録画面
図2●「なかのひと」登録画面
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 登録が完了すると,それを知らせるメールが届きます。登録時にはパスワード欄はありませんが,登録完了メールにパスワードが記載されています。登録したメールアドレスと,届いたパスワードでログインすると,自分のサイトの解析結果を見ることができるようになります。

 「なかのひと」は,2007年4月20日からサービス提供を開始し,なかのひと運営委員会が開発,運営しています。運営委員会は企業団体ではないようで,詳細は公開されていません。サイト内の各ページ下部には運営委員会へのリンクが貼られていますが,リンク先は連絡先としてのメール・アドレスのみが掲載されています。

 お約束ではごさいますが,本稿の内容にかかわらず,もしもあなた自身が「この運営体制は個人情報保護の観点から信じられない」と思われるのであれば,登録や利用は控えてください。本稿は,なかのひと運営委員会の信頼性までを保証するものではありません。

 登録に際して,以下の条件に同意が必要です(登録時の注意文より引用)。

  • 閲覧が一部の会員のみに限定される,会員限定サイト内でのご利用はできません。
  • アダルトサイト,公序良俗に反するサイトでのご利用はできません。
  • 悪意を持って個人を特定するために利用することはできません。
  • ベータ版サービスにつき,サービスの安定性,継続性,正確性などは一切保証しません。
  • 当サービスによる一切の損害を補償しません。

 「なかのひと」はベータ版です。mixiあたりから“ベータ版”という呼称があちこちで散見されるようになりましたが,本来ベータ版というのはソフトウエア業界で,正式版リリース前の限定的なテスト段階にある状態を指します。評価版よりもさらに前の状態です。一般に見せられるものではないというところでしょうか。

 しかし,最近言われる“ベータ版”はそこまで状態が悪いものではないみたいです。似たような例で,プログラム用語の“バグ”という言葉も一般語化しましたし,ベータ版もバグと同様に一般語になってきているんだなあと感じてしまいました。「なかのひと」はすでに多くのユーザーに利用されているサービスですから,厳密な意味でのベータ版ではなく,一般語的な意味でのベータ版のほうにあたるようです。