「今年は資格試験を12個合格するぞ!」。2007年の正月,私はこう宣言して,新しい年のスタートを切った。1年に12の資格試験に合格するということは,1カ月に1つの資格試験というペースで,受験勉強をして,試験を受け,合格しなければならない。もちろん日中は仕事がある。私の場合,開発業務が中心のため,帰りが夜遅くなったりと,勉強する時間も限られるので,1年で12の資格試験合格は,無謀とも言える計画だった。

 この資格取得計画の大きな目標の一つは,ネットワークとセキュリティに関する知識や技術を習得することだった。以前の私は,ネットワークとセキュリティに関する質問をされると,いつも苦手意識が先走り,詳しい人に振ってしまったり,かかわりたくないという思いでいっぱいになったりしていた。そんな自分を打破したかったのだ。

 目標がネットワークとセキュリティに関する知識や技術を習得することである以上,この分野の資格がターゲットの一つになる。私はまず,プロメトリックが実施しているCBT(Computer Based Testing)試験に着目して,ネットワークとセキュリティに関する知識や技術を取得できそうな資格試験を探してみた。そこで見つけたのが,「マスターCIWアドミニストレータ」だ。会社から報奨金も出ることもあり,私はこの資格の取得を目指すことにした。ちなみに,プロメトリックが実施している試験は以前にも受験したことがあり,自分が好きな日に,好きな時間に受験可能で,その場で合否が分かるという点で魅力がある。

実践的な対処方法を問う問題に苦戦

 マスターCIWアドミニストレータ資格に認定されるためには,以下の4つの試験に合格する必要がある。

(1)CIWファンデーション試験
(2)CIWサーバアドミニストレータ試験
(3)CIWインターネットワーキング・プロフェッショナル試験
(4)CIWセキュリティ・プロフェッショナル試験

 私はソフト開発会社に入社当時,開発業務に携わったのを機会に,XMLマスター,ORACLE MASTER,MCP(マイクロソフト認定資格)など,さまざまなベンダー資格を取得した。そのときの学習スタイルは,市販の問題集を読み,付属する学習ソフトで暗記するぐらい勉強するというものだ。今回も,市販の問題集を購入すれば対策は完璧だろう,と甘くみていた。

 しかし調べてみると,CIWファンデーション以外の試験は,市販の問題集が存在しないことが判明した。そこで,CIWのホームページでサンプル問題集や試験範囲を確認し,CIWファンデーション以外の試験については,試験範囲の知識を「ソフトウェア開発技術者試験」の受験時に使用した参考書と問題集で勉強することにした。

 最初に受験したのはCIWファンデーション試験である。市販の問題集に一通り目を通すぐらいだったが,この試験は簡単に合格できた。CIWファンデーション合格後約1カ月間は,主に土日を使って,「CIWインターネットワーキング・プロフェッショナル」と「CIWセキュリティ・プロフェッショナル」の試験範囲を勉強した。

 CIWファンデーション試験に簡単に合格できたことから,この2つの試験も「簡単な試験だろう」と甘く見ていた。「早く資格を取得したい」という思いもあり,この2つの試験は連続して受験することにした。ところが,私の予想と異なり,CIWインターネットワーキング・プロフェッショナル試験もCIWセキュリティ・プロフェッショナル試験も,問題の半分以上が「こんなときはどんな設定が必要か?」「こんな障害が発生した。どう対応するのがよいか?」といった,状況に応じた実践的な対処方法を問う問題だった。

 試験勉強で,単語や用語の意味や概要は理解していた。しかし,「実際にどういった場面で適用されるのか」や「障害が発生したときの有効性」は,全く理解していなかった。結果はもちろん,2つとも「不合格」。合格基準の半分にも届かない結果だった。私は「ダブルパンチとはこのことだ」と思い,受付でスコアレポートを受取って落胆して試験会場を後にした。

 家に戻り,私はすぐにノートに今日出題されていた問題を覚えている限り書き出した。全問解答後,採点ボタンを押す前に,どんな問題が出題されているかを終了時間まで確認していたので,試験問題はよく覚えていたのだ。

 ノートに書き出した問題をじっくり見ても,敗因は明らかだった。各技術について,どんなものかは理解できているが,どういった場で使用してどんな有効性があるのかが理解できていない。逆に言えばそこさえ理解できれば合格できるーー私はそう確信し,再度試験勉強を開始した。

MCPの問題集と実機による検証で実践的な知識をマスター

 2回目の受験では,前回のような「ダブル受験」はやめて,1つずつ集中して勉強することにした。まず取り組んだのが,CIWインターネットワーキング・プロフェッショナルである。

 1回目の試験勉強では,ソフトウェア開発技術者試験用の参考書と問題集を使ったが,2回目の試験勉強ではそれに加えて,以前に受験したMCP試験「Implementing and Administering a Microsoft Windows 2000 Network Infrastructure」(試験番号70-216)の問題集も利用した。この試験は,内容が「CIWインターネットワーキング・プロフェッショナル」と類似しており,しかも具体的な事例を想定した実践的な問題が多い。このため,前回の試験の敗因だった「状況に応じた対処方法の理解」には最適と考えたのである。

 問題集を解くだけではなく,実際に実機を使って検証することで,さらに理解を深めることができた。その結果,CIWインターネットワーキング・プロフェッショナルの2回目の受験では,前回よりもスムーズに回答でき,無事合格ができた。

 その後,CIWセキュリティ・プロフェッショナルの受験に向けて,再度ソフトウェア開発技術者試験用の参考書と問題集でセキュリティ技術を勉強した。もともとセキュリティは苦手だったのだが,MCPの問題集と実機検証でネットワークに関する理解が進んでいたため,セキュリティ技術もスムーズに理解できた。そのかいあって,CIWセキュリティ・プロフェッショナルは,ほぼ満点近い点で合格できた。このときの受験勉強は,セキュリティ分野(特にSSLや暗号化方式,認証関係の技術)に興味を持つ,大きなきっかけにもなった。

 残りのCIWサーバアドミニストレータも,MCPの問題集と実機検証でサーバーの理解が深まったため無事1回で合格することができ,2008年2月に,晴れてマスターCIWアドミニストレータに認定された。

実践で生かせた時に初めて意味を持つ

 資格試験は,合格後いかに業務の中で生かせるかが重要だと思う。実践で生かせた時に初めて,資格取得が意味を持つ。このため私は,プロジェクトで新しい技術を覚える必要に迫られたときは,まず該当しそうな資格試験を探し,新しいプロジェクトに入るまでに合格して,その資格で習得した知識をプロジェクトで生かすようにしている。これはモチベーションの向上にもつながり,仕事も楽しく行える。

 多くの資格を取得していると,「○△資格持ってるんだよね?」と部署内でその資格がカバーする技術的な質問をされることもよくある。部署内で技術的に頼りにされるのは,とても励みになる。また,「あいつが合格したんだから,俺も頑張って受けてみようか」と考える同僚もいる。私の資格取得がきっかけで,周りで資格試験を受験する人が増えるのは嬉しいことだ。

 冒頭で述べたように,2007年は12の資格試験合格を目指した。結局,目標の12には届かなかったが,入社して初めて,1年間で8つの資格試験に合格することができた。その内訳は,「ビジネス著作権検定 初級」「MCP試験70-431」「マイクロソフト認定データベースアドミニストレータ」に必要な4つのMCP試験,それに「CIWファンデーション試験」と「CIWインターネットワーキング・プロフェッショナル試験」である(CIWセキュリティ・プロフェッショナル試験とCIWサーバアドミニストレータ試験は2008年に合格)。

 CIWの試験勉強を通じて,念願だったネットワークとセキュリティの基本的な技術は身についたと思う。今後も資格試験を通じて苦手分野を上手に克服していくことで,さらなる技術向上を図り,業務に全力で取り組んでいきたいと思う。

試験概要:マスターCIWアドミニストレータ資格
CIW(Certified Internet Web Professional)は,インターネット技術者のスキルを総合的に証明する国際資格。1998年1月に米国でスタートし,世界70カ国以上で試験が実施されている。現在,世界中に約13万人の合格者がいる。日本では,プロソフトトレーニングジャパンが運営・管理している。「マスターCIWアドミニストレータ資格」はCIW資格の1種で,ネットワーク,システム,イントラネットの管理者としてのスキルを証明する。

小林 勝巳(こばやし かつみ)
1975年生まれ。日本大学大学院工学研究科情報工学専攻修士課程修了。富士通東北システムズに入社後,土木積算システムの運用保守作業やターミナルサービス,MetaFrame技術を用いたシステム運用構築に携わる。現在は,税システムの開発に携わり,主に国民健康保険税、固定資産税、法人住民税システムの開発を担当。保有資格は「XMLマスター」「ORACLE MASTER」「MCDBA(マイクロソフト認定データベース アドミニストレータ)」「ビジネス著作権検定」。