伊藤 優伊藤 優(いとう ゆう)
株式会社アキタ電子システムズ
ソフトウェア設計部主任技師


 本連載で説明してきたWindows Embedded CE 6.0が発売されたのは2006年でした。これは、初めてWindows CEが発売された1996年から数えてちょうど10年目にあたります。今回は連載の締めくくりとして、この10年間に出たWindows CEのバージョンと、その開発コードネームの系譜を紹介します。

Windows CEの始まりは「ペガサス」

 Windows CEが市場で最初に発売されたのは、1996年でした。当時はハンドヘルドPCという小型のPCコンパニオン製品として発表されました。これは、小さな画面とキーボード、そして簡易オフィスアプリケーションが搭載された製品でした。

 当時のマイクロソフトは、サーバー用としてWindows NT 3.51やWindows NT 4.0を、またコンシューマ向けにはWindows 95を精力的に販売していました。Windows NTは32ビットOS、Windows 95は16ビットOSでしたが、当時のマイクロソフトとしては最新のOSであるWindows CEは、新設計の32ビットOSとして世の中に登場しています。

 今でもWindows CEについて「Windows 95から移植した」とか、「Windows NTのダウングレード版」といった噂を口にする人がいます。しかし、このWindows CEは完全に新しいアーキテクチャのOSとして設計されています。当時のマイクロソフトのエンジニアたちは、カーネルに新しいカーネル(New Kernel)という意味を込めて「NK」と名付けました。このNKという言葉は、現在でもWindows CEのカーネルプロセス「NK.EXE」や、OSイメージファイル「NK.BIN」にその名を残しています。

 マイクロソフトでは、Windows CE以前に小型デバイスに対していくつかのプロジェクトがあったそうです。PDA用としてPulsar(32ビットOS)、ハンドヘルドPC用としてWinPad(16ビットOS)の開発が進んでいましたが、それらの開発がキャンセルとなり、「Pegasus(ペガサス)プロジェクト」に統合されました。このPegasusが、Windows CE 1.0の開発コードネームとなったのです。

 図1はマイクロソフトからベータリリースされたWindows CE 2.0の開発環境CDのジャケットです。この頃でもまだ、Pegasusのデザインがそのまま残っていたのです。

図1●Windows CE 2.0の開発環境CDのジャケットにデザインされたペガサス
図1●Windows CE 2.0の開発環境CDのジャケットにデザインされたペガサス