Q: 経営層になりたいので,転職したほうがいいのか悩んでいます。それに正直SEという仕事に飽きてきました。

 現在,中堅SIerのアプリケーション・エンジニアとして働いてます。プチPMのようなことも行っています。現在はそれなりに充実していて,今後数十年,SEとしてやっていくのも悪くはないのですが,最終的にPMとして働くよりは,地位も名誉も得られる経営層になりたいので,転職したほうがいいのかどうか悩んでいます。それに正直SEという仕事に飽きてきました。
(SE/男性・28歳)

A:外部から声がかかるくらいに自分の商品価値を高めよ。そのためには今の仕事で一流になれ

 私の日本IBM時代の悩みと同じですね。私も日本IBMでSEとプチPMをして,将来は経営者になりたいと思っていました。

 私の場合は,将来の独立のために,まずボストン コンサルティング グループへ転職してコンサルタントとしての修行をし,さらなる転職を経てそのまま経営者まで階段を登ったのですが,「雇われ経営者」に満足できず,独立して自分の会社を立ち上げたわけです。

 そんな私の経験から言えば,転職をお薦めします。しかし,それは社会が自分を求めている場合。つまり,ヘッドハンターから声がかかるのがベストです。あるいは,ご縁のある方から引っ張ってもらうことです。

 「地位や名誉のある経営層」となると,それなりの会社のトップに立たなければなりませんが,そういう会社は,今や外部の人材をヘッドハントすることも盛んになってきました。つまり,まずは外部の人間から声がかかるような人材にまで,自分の商品価値を高めておく必要があります。そうでなければ,転職しても経営層まで到達するのは難しいでしょう。それだけ競争は厳しいのです。

 さらに,地位や名誉を獲得するためには,実力は必要条件であっても十分条件ではありません。社会,業界,会社おのおのの環境で,自分の人生を決めるような縁や運がなければならないのです。例えば,ヘッドハントされて部長職になって,さぁ次は役員だ,というタイミングで業界環境が変わり,会社の経営状況が悪くなることもあるでしょう。

 私の場合,転職した先々で私を引っ張ってくれるボスに恵まれましたし,運もありました。250人のKPMGコンサルティング(現・ベリングポイント)の代表取締役になったとたん,グローバルな企業買収の一環で国内でも朝日アーサーアンダーセンの買収が行われ,いつの間にか従業員1000人の会社の経営者になっていたのです。これはまさにラッキーなのですが,出世する人間を観察すると,必ず何かそのような幸運に恵まれているものなのです。

 もちろん,早めに独立して会社を立ち上げる方法もありますが,それは人との縁やタイミング,独立するために十分なコンピタンス(技術力,製品,サービス)などがそろった時でなければ,ほとんど失敗します。また,ベンチャー企業の経営者でも地位や名誉はありますが,経済界などで胸を張っていられるには,それなりの規模や実績が伴う必要があるので,かなりの時間がかかります。

 いずれにしても,まずは自分を磨くことです()。そのためには,今の仕事で一流になるのが最も近道です。転職のために今の仕事を頑張れ,というのは逆説的ですが,何かの分野で一流と認められなければ,外部の人間は認めてくれませんし,独立もままならないでしょう。

図のタイトル
図●まずは自分を磨く