「複雑な数式を教科書のようにキレイに表示したい。数式エディタでは物足りない」。このように思うことはありませんか。この問題を解決するソフトウエアがTeX(テフまたはテック)です。TeXは,指示に従って文字や図,表を配置し,ページを作り上げる電子組版ソフトです。とりわけ数式の表示などが美しく,レポートや学術論文などの記述に適しています。フリーソフトなので,誰でも入手できます。また,Windows,Mac OS,各種UNIXなど,様々なOS上で利用できます。

 TeXは,マークアップ言語で記述します(図1)。TeXによる記述は,コマンドを記述した命令部分と文字そのものに分けられます。命令に従って文字を組版してページのイメージを作成し,組版結果をDVI(Device Independent)形式と呼ばれるオブジェクト・ファイルに書き出します。DVI形式のファイルには,ページのどの位置にどんな文字を配置するかといった情報が書き込まれています。

 ただ,DVIファイルのままでは,印刷したりディスプレイに表示したりできません。外部に出力するには,DVIファイルを解釈して出力する別のソフトウエアが必要になります。例えば,PS(PostScript)形式に変換するdvi2psやPDFに変換するdvipdfmなどがあります(図2)。

 TeXは高機能な組版ソフトですが,文書を整形していくのは大変な作業です。そこで,あらかじめ複数の文字装飾用のプログラムを組み合わせたパッケージが用意されています。代表的なのが,TeXをベースに機能強化したマクロ・パッケージ「LaTeX」です。LaTeXを利用することで,文書テンプレートを利用したり,一つの文章を複数のLaTeXソースに分割できます。分割された文章を統合することも可能です。

 TeXの利用環境を構築するには,「TeX Wiki」が参考になります。WindowsでTeXを利用する場合には,阿部紀行氏が開発した「TeXインストーラ3」が使えます。TeXは,Wordなどのワープロ・ソフトに比べると慣れるまでに時間がかかりますが,化学式や数式を出版物並みのキレイな文字で出力できるのは魅力です。

図1●TeXで文章を作成しているところ
図1●TeXで文章を作成しているところ

図2●DVI形式のオブジェクト・ファイルをdvipdfmを利用してPDFに出力することもできる
図2●DVI形式のオブジェクト・ファイルをdvipdfmを利用してPDFに出力することもできる
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TeX
ジャンル:電子組版ソフト
開発:Donald E. Knuth氏
URL:http://www.tug.org/