永井 孝一郎
After J-SOX研究会 運営委員・事務局
アビーム コンサルティング
プロセス&テクノロジー事業部 プリンシパル

 第1回の「J-SOX対応を企業価値向上の契機に」では、企業におけるJ-SOX対応の状況と、その課題について幅広い視点から解説した。これを受けて本稿では、J-SOX対応を含む経営課題について、企業がいま実際に何を考えているのかを、アンケート調査の結果に基づいて解説する。

J-SOX対応後の関心はどこに?

 まず、内部統制にかかわる企業の関心の方向性を見てみよう。これから紹介する2つの図は、日本経済新聞社が「日経マネジメントフォーラム2008」(2008年1月23日開催)への参加申し込み者を対象に、Webで行ったアンケートの結果である。回答者の総数は2235名で、うち2割が経営者・役員、3割が管理職だ。

 「2008年の経営課題として関心のあるテーマ」を尋ねたところ、最も多かった回答は「内部統制(J-SOX対応、法令順守強化など)」だった(図2-1)。このセミナーのテーマは「2008年の経営環境展望とITによる革新」であり、回答者の職務と内部統制とは必ずしも直結してなかったにもかかわらず、6割以上が2008年の関心事として内部統制を挙げている。

図2-1●2008年の経営課題として関心のあるテーマ(複数回答可、有効回答者数2190)
図2-1●2008年の経営課題として関心のあるテーマ(複数回答可、有効回答者数2190)


 次に、同じ回答者に、J-SOX対応後(After J-SOX)の“次の一手”として関心のあるテーマを聞いた結果が図2-2である。

図2-2●J-SOX対応後の“次の一手” として興味のあるテーマ(複数回答可、有効回答者数2167)
図2-2●J-SOX対応後の“次の一手” として興味のあるテーマ(複数回答可、有効回答者数2167)


 回答者の半数以上が、J-SOXで「見える化」した業務の標準化・効率化を考え、統合リスク・マネジメント(ERM:Enterprise Risk Management)への展開やシェアードサービス化についても関心を持っていることがわかる。多くの方が「内部統制整備を単なる法制度対応に終わらせず、次の一手に結びつけよう」と考えていることは興味深い。