◆今回の注目NEWS◆

◎市の新財務書類四表【バランスシート・行政コスト計算書・純資産変動計算書・資金収支計算書(平成18年度決算版)】ができました(浦安市、4月4日)
http://www.city.urayasu.chiba.jp/a007/b009/d00900020.html
◎財務4表の公表について(各務原市、3月28日)
http://www.city.kakamigahara.lg.jp/shoukai/zaisei/kaikei.htm

【ニュースの概要】千葉県浦安市と岐阜県各務原市が、総務省の「基準モデル」での新公会計制度に基づく財務4表を公表した。


◆このNEWSのツボ◆

 千葉県浦安市と岐阜県各務原市が、総務省の「基準モデル」での新公会計制度に基づく財務4表(貸借対照表、行政コスト計算書、資金収支計算書、純資産変動計算書)を公表した。いずれの市も、全国平均と比較するとかなり優良な財務状況にあるようだが、両市が「基準モデル」での財務4表を公表したということは、市町村における今後の公会計整備にある程度影響を与えそうである。

 自治体の発生主義・複式簿記による企業会計的な「新公会計」については、本稿でも何度か取り上げてきたが、この公会計には二つのモデルが存在する(総務省「新地方公会計制度実務研究会報告書の概要等」)。

 「基準モデル」と「総務省方式改訂モデル(以下、改訂モデル)」である。この2つのモデルの一番大きな相違点は、基準モデルでは、自治体が保有する資産を基本的にすべてを公正価値により評価するのに対し、改訂モデルでは、いわば簡便法とも言うべきやり方で、売却可能資産だけを時価評価し、その他の資産は過去の建設事業費の積み上げから、(本来の資産価値とは関係なく)簡易的に資産価値が算定される。

 作成は、改訂モデルの方が簡単で、社会経済生産性本部の調べでも当面は改訂モデルを採用するという自治体が90%以上となっている。

 しかし、各務原市の担当者が述べておられるように(関連記事)、自治体の財政状況について「的確な把握」をしようと思えば、基準方式ということになるだろう。

 大阪府で橋下新知事が、財政改革と資産売却を唱えて、様々な議論を呼んでいるが、将来世代の負担を考えて行財政改革を公正に進めようと思えば、その基本となる財政状況の正確な把握と開示は避けては通れないだろう。その意味で、今回の浦安市と各務原市の基準方式による財務4表の公開と今後の活用は、自治体における公会計導入のリトマス試験紙的な先行事例となるかもしれない。

安延氏写真

安延申(やすのべ・しん)

通商産業省(現 経済産業省)に勤務後、コンサルティング会社ヤス・クリエイトを興す。現在はフューチャーアーキテクト社長/COO、スタンフォード日本センター理事など、政策支援から経営やIT戦略のコンサルティングまで幅広い領域で活動する。