当初の商用NGNによるサービスのラインアップは,NTT東西自身が「スモールスタートで順次拡大する」と言う通り,「2007年度中に開始する」ことを優先した必要最小限の内容だ。2008年は夏から秋にかけて徐々に機能を追加していく(表1)。

地域IP網でも提供できるサービスが中心

 開始した商用サービスは大きく,(1)ブロードバンド,(2)IP電話,(3)VPN,(4)広域イーサネット,(5)コンテンツ配信──の5種類がある。

 順に見ていくと,(1)のブロードバンド「フレッツ 光ネクスト」は当面,個人向けサービスを提供する。戸建て向けの「ファミリータイプ」と集合住宅向けの「マンションタイプ」の二つがあり,料金はBフレッツと同じ月額4305円(NTT東日本の戸建て向け)とした。

 (2)のIP電話の「ひかり電話」も,基本料や通話料は,今までと変わらない。通話する相手がフレッツ 光ネクストのユーザーで,なおかつ対応機器を使っていれば,高音質な通話や標準テレビ画質のテレビ電話が可能になる。(2)にはこのほか,同時に8回線分まで通話可能な「オフィスタイプ」がある。これは戸建て向けの回線を導入する企業の利用を想定したものだ。

表1●NGNで提供される商用サービスの概要
表1●NGNで提供される商用サービスの概要

 企業専用に提供する(3)のVPNは,複数の拠点からNGN網経由で本社などにつなぐセンター回線集約型の「フレッツ・VPNゲート」である。内容は,既存の「フレッツ・オフィス/オフィスワイド」と同じで,特に新しい機能は追加されていない。料金は100Mビット/秒のセンター回線料金が月額約160万円で,フレッツ・オフィス ワイドよりも約30万円安くなる。

 (4)の広域イーサネット「ビジネスイーサ ワイド」は,NTT東西が提供を許されていなかった県間通信や,NTT東西間の通信が可能になり,適用範囲が広がった。

 また,Ether-OAM機能を使って回線を常時監視するほか,アクセス回線と回線終端装置を冗長化する「デュアルアクセス」のオプションが加わり,信頼性も向上した。料金は,100Mビット/秒品目で県内2拠点を結ぶ場合で約45万円。既存のビジネスイーサ・シリーズより数万~数十万円安くなる。

 (5)のコンテンツ配信サービス「フレッツ・キャスト」は,映像配信したい事業者向けサービスであるとともに,フレッツ 光ネクストのユーザーが受信できるサービス。NGNで新たに追加されたSNIを活用することで,フレッツ 光ネクストユーザーに対して,1対1のユニキャスト方式や,1対多のマルチキャスト方式で映像や音声などを配信できる。通信帯域を確保するQoS(quality of service)保証型の通信も利用できる。QoS保証型のマルチキャスト・サービスは,当面は地上デジタル放送の再送信に用途を限る。

 フレッツ・キャストは当初NTTぷららが採用し,多チャンネル放送とVOD(video on demand)の統合サービス「ひかりTV」を提供する。地上デジタル放送のIP再送信はスケジュールが遅れ,4月末になっても開始できていない。

1ギガFTTH回線などの追加は夏から秋

 NTT東西の計画では,2008年秋ころまでにエリア拡大を進めつつ,地域IP網とサービス内容が同等になるよう拡充する。全国の主要都市をほぼカバーする2009年初めまでは,「部分的に新機能は追加するものの,基本は既存サービスの代替メニュー」(NTT東日本)だという。

 第1弾のサービス拡充は,2008年第2四半期から第3四半期にかけて実施する。夏には企業向けのFTTH回線となる最大約1Gビット/秒の「フレッツ 光ネクスト ビジネスタイプ」の提供を始める見込みだ。

 ひかり電話オフィスタイプも,「センター拠点側で現状の8回線分をまとめて契約し,20~30回線程度必要なユーザーも使いやすくする」(NTT東日本)という。VPNはセンター回線集約型に加えて,網内に設定したグループに各拠点が登録し,相互に通信できる「フレッツ・VPNワイド」を開始する。