いまや常識 企業ウェブサイトでのリクルート

 一昔前の就職活動といえば、学生は、就職情報会社から送られてくる分厚い電話帳のような情報誌を見て、検討、志望する職場を探すのが一般的であった。学生は、記載されている各会社の窓口へ電話をかけ、会社説明会に応募したり、面接の問い合わせ等を行っていた。

 会社側では、シーズンになると資料作成や問い合わせの電話対応、各地での説明会会場の席数調整など、それなりに大勢の人員と費用をかけて準備しなければならなかった。

 この伝統的なお互いの作業が、ウェブサイトの出現と共に大きく変化した。企業側は、ウェブサイトに各種情報を掲載し、印刷物も必要なくなった。問い合わせはメールで、履歴書等も添付やフォームで受け付けるようになり、その整理も簡単になった。

 問い合わせ対応のために多くの要員を揃える必要もなくなり、人件費も劇的に削減された。説明会会場の予約受付も航空会社の座席予約よろしく、無人でできるようになった。

 学生側は、各社のウェブサイトで必要な情報を入手し、検討、説明会を予約までオンラインで時間を気にせず完了できるようになった。

 このように、関係者双方が効率よく物事を推進でき、かつ、費用も時間も圧縮できるものは必ず普及し、スタンダードとなっていく素地を持っている。最近では、このプロセスをサービスとして提供する会社も出現し、それなりのマーケットとなっているようだ。

企業ウェブサイトの役目

 このように時代が大きく動き、新卒、経験者を含めたリクルート活動の舞台は、ウェブサイトにシフトしたのではなかろうか。

 もちろん、最終的には、人と人とが直接会って確認する面接は、最終判断プロセスとして残ると思うが、場合によっては、オンラインでのTV面接なども業種によってはあり得るようになるかもしれない。いずれにせよ、ウェブサイトを使っての企業情報提供や求人活動、求職活動は、これから重要な位置を占めるのは間違いない。

 このような状況下、企業側でのウェブサイトマネジメント、特にリクルート領域でどのように対処すべきだろうか。

 前述したように、問い合わせや、説明会会場予約など、合理化のためのプロセスはどんどんシステム化も可能だし、推進すればよいだろう。

 しかし、もっとも重要なことは、自社の考えや、正しい姿を伝え、理解してもらうことではなかろうか?このことは以前(第10回その他)も触れさせていただいたが、情報領域が製品、サービス、採用‥‥と違うだけで、顧客対応という視点で見ると全く同じことなのである。

 したがって、この領域は入社希望者と自社とのお見合い、あるいは恋愛?の始まり時点というところかもしれない。

 企業側では、自社をよりよく理解してもらうためのコンテンツを企画し、掲載するのもいいだろう。つきなみなリクルート情報ではなく、その業務内容をもっと深く理解していただけるような良質のコンテンツをいくつか用意したい。

 努力しただけ報われる可能性が高い。ご存じのように、これから、特に日本国内の若い人々の人口は減少の一途をたどるのは明白。旧態依然としたリクルート活動のみでは、飛躍は望めないだろう。

 企業の雇用施策自体に関することとなってくるため、これ以上のウェブ領域からの言及は控える。

 リクルートのためのウェブ上での施策が重要であることはもちろんだが、常日頃のウェブサイトの振る舞いも、リクルート領域へ大きな影響を与えているということをウェブ担当者は強く認識しなければならない。

 校庭でのかっこいい先輩の部活の様子を、校舎から後輩が眺めているようなものだ。常日頃の何気ない一挙一動を誰かが見ているのである。

 経験者、新卒に関わらず、リクルート活動を離れると、重要なお客様の一人となる。あるいは、今後重要な取引先になるかもしれない。ウェブサイト、リアルなマーケティングの現場など、あらゆるタッチポイントでの顧客との対応や挙動が、自社の印象(イメージ)を大きく左右することをあらためて認識し、行動したい。

 ウェブサイト上での細かな気遣いや、あらゆるコンテンツがその要因のひとつになるのである。

 製品、サービスの相手方のみが顧客ではない。入社希望者、株主、投資家など、あらゆる顧客層を常に意識しながらのサイトマネジメントが、今後特に強く求められていくだろう。