前回に引き続いて,組み込み業界の最前線でソフトウェアを開発しながら、このたび『Windows Embedded CE 6.0組み込みOS構築技法入門』を執筆したメンバーの皆さんに、組み込みソフトウェア開発の現状と課題、そして楽しさを語ってもらった。(※1)(聞き手は中西 佳世子=日経BPソフトプレス)

(※1)この座談会はメールで交換した意見をもとに編集したものです。

自分の手で動かすことは、何にも代え難いモノ作りの楽しさ

組み込み開発は苦労の多い仕事ですが、面白いところは?

伊藤:これは難しい質問ですね。とにかく開発をしている時には面白いというよりも「たいへん」ということが多いですから(笑)。

江島 午郎 氏
江島 午郎氏。コードギア株式会社
江島:ほんとにそうです。でも動いた時は嬉しいですよ。自分の世界に没頭して、手元で開発物の挙動を確認できる。これは面白いです。

岩崎:私もです。コンピュータやハードウェアの上でプログラムが動いている仕組みを理解できるのはとても楽しい。

高根:画面の中で動くだけでなく、実際にアームが動いたり、声が出たり …。その感動は、組み込み開発ならではものでしょう。

松井:たとえばデバイスドライバを書いてデバッグして、そのデバイスが動いた瞬間は素直に楽しいです。また開発に関わらせていただいた製品が雑誌やWeb上で紹介されているのを見たときも感動します。

田靡:自分が作ったデジタルカメラが大手量販店に並んでいるのを見た時は、感動しました。

大場:私も街で自分の関わったハンディターミナルを使っている人を見て、思わず「使い心地はいかがですか?」ってたずねちゃいました(笑)。

マヘシュ:温室制御(オートメーション)は面白かったですよ。温室植物の特性を勉強して、その温室植物に対して温室の温度、換気、湿度、灌水などを管理するんです。目に見えるから楽しいですね。

大場:私は海外向けの文字読み取り装置をやったときですね。数字一つにしても、文字の癖って世界で違うんだと思いました。その裏にある考え方の違いや背景など、たいへん勉強になりました。

古賀 信哉 氏
古賀 信哉氏。株式会社サムシングプレシャス
古賀:8ビットマイコンを使った自立飛行体を子供たちとC言語で作ったことがあります。パソコンでウィンドウを出したり絵を表示するだけのプログラムと違って、LEDを光らせたり、モーター駆動でプロペラを回したり、超音波センサで距離を測ったり、とリアルな動作がありますから、子供たちの目の輝きが違います。できた飛行体をコンテストする企画だったのですが、子供たちの方が大人よりずっと優秀で感心しました。

好井:組み込み開発の講師をするときは、このように通常のデスクトップアプリケーションでは得がたい楽しさを伝えていくことが大事だと思いながらやっています。

江島:モノ作りの根源には、目的や喜びに繋がる情熱とスピリットがある。それを伝えていかなきゃいけないと思います。