開発●Bryce Harrington氏ほか
URL●http://inkscape.org/

実に様々なソフトウエアが無料で利用できるようになっています。そこで,主に「ソフトウエアを作る環境を楽しくするお役立ちフリーソフト」を集めて,1日1本のペースでご紹介します。

 「Inkscape」はオープンソースのドロー・ソフトです。GIMPがいわば商用製品「Adobe Photoshop」のオープンソース版だとすると,Inkscapeはいわば「Adobe Illustrator」のオープンソース版だといえます。フォトレタッチ・ソフトとは異なり,基本的にベクター・グラフィクスを作成するためのツールです。画像を点の集合としてとらえるのではなく,線の起点と終点の位置や曲線の曲がり方,太さ,線に囲まれた面の色などを,数値で表します。ビットマップ画像は点の集合なので,拡大すると絵がどんどん粗くなっていきますが,ベクター・グラフィクスは拡大しても画像の品質が変わりません。しかも,ビットマップ画像に比べてファイル・サイズをかなり小さくできるという利点もあります。

 Inkscapeは直線や円だけでなく,「ベジエ曲線」の描画機能も持っています。ベジエ曲線とは,「ノード」と呼ばれる制御点とノードに設定された方向線からなる滑らかな曲線です。ノードと方向線を操作することで,曲線の形をいろいろと操作できます。いい加減に曲線を描いたとしても,ベジエ曲線なら修正ができるのです。

 ベクター・グラフィクスには何種類かのファイル・フォーマットがありますが,Inkscapeはそのうちの「SVG(Scalable Vector Graphics)」に対応します。このフォーマットはW3Cが標準として勧告しているもので,ファイルの実体はXMLです。ファイルの中身をテキスト・エディタなどで編集することもできます。InkscapeはそのためにXMLエディタも搭載しています。

 SVGはWebページに埋め込む画像フォーマットとして策定されました。Internet ExplorerはSVGを表示するのにプラグインが必要ですが,Firefoxは部分的にSVGに対応しています。

 将来的にSVGが主流になったときのことを考えると,今からフリーで使えるInkscapeでSVGに慣れておくのもよいでしょう。

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