今回は,「会議は段取りで決まる!」と題して,会議前にどんな準備をしておくべきかについて解説したい。
早速,前回のケーススタディの続きから,スタートしよう。
経営企画部長から,次期基幹システム再構築プロジェクトのリーダーに任命された情報システム室主任の山田さとし。山田を含めて7人のプロジェクト・メンバーが決まり,メンバーの1人である製造部門の高田工長が,サブリーダーとして山田を補佐することになった。いよいよ,山田のプロジェクトが本格始動する・・・
デスクにて。
山田:「プロジェクト・チームのメンバーは決定したし,高田工長をサブリーダーに迎えることもできた。これからは,プロジェクトをどう進めていくかを考えよう。まずは,みんなに集まってもらって,顔合わせのための『キックオフ・ミーティング』を開催しよう。でも,キックオフ・ミーティングで何をしたらいいんだろう?部内ミーティングのリーダーの経験はあるけど,全社レベルのミーティングをリードするのは初めての経験だし。最初に失敗するわけにはいかないし。困ったな・・・」
事前準備としての段取り不足が疑問や不満を招く
ミーティングは,どのような企業・組織でも日常的に開催されている。その目的は,日常業務の連絡・報告,テーマに基づいた議論,業務の意思決定など多岐にわたり,開催頻度も定期的,臨時など様々だ。
しかし,「何の目的で開催されているのか?」「参加して何の意味があるのか?」「ミーティングをしたのに結果として何も決まらなかった」など,ミーティングに対して疑問や不満を持ったことがある人は,多いのではないだろうか。
このような疑問・不満を抱くことになる原因の多くは,「事前準備としての段取り不足」にある。準備もせずに,「とりあえずミーティングするか」では,よい結果は得られない。また,電子メールや電子掲示板などコミュニケーション手段が発達した現在の業務環境では,そもそも「本当にみんなで集まってミーティングを開催する必要があるのか?」ということを考え直してみることも大切だ。
では,ミーティングの疑問・不満の原因となる「事前準備としての段取り不足」を解消し,意味のあるミーティングにするためにはどうすればよいだろうか。山田のケーススタディに戻ろう。
デスクにて。
山田:「待てよ。物事を考えるときは,5W1Hで考えればいいって聞いたことがあるぞ。よし,キックオフ・ミーティングの5W1Hを個条書きしてみよう」
山田は,次のような項目をノートに書いてみた。
|
山田:「クリアになってきたな。個条書きした項目について,一つひとつ具体的に計画を決めていくことにしよう」
ミーティングの段取りを考える
あなたがミーティングを主催する場合も,山田のように,まずはミーティングの計画を具体的に考えるべきだ。一般的には,表1に示すような段取り事項を決めるとよい。
段取り事項 | 内容 |
---|---|
1.目的とゴール | ミーティングを何のために行なうのか。目的だけではなくゴール(求める成果)も決めておく。電子メール,電子掲示板などが普及している今日では,「本当に会議が必要なのか」を考えてみることも必要 |
2. 出席予定者 | 目的とゴールを達成するためには,誰が出席する必要があるのか。出席者が気兼ねなく意見を交わせるように,メンバーの属性(第2回参照)を考慮して構成することが重要 |
3. 場所および日程,時間 | 開催日程,時間,開催場所を決める。活発な意見交換ができるような席の配置や座席位置にも配慮する |
4. 進め方 | ミーティングは一方通行のものではなく,インタラクティブな内容でかつ問題を多角的に議論できるよう工夫すべきである。また,話し方により議論は良い方向にも悪い方向にも進む。出席者の“やる気”を高めているかどうかを確認しながら進めるのがベター |
5.必要資料 | どのような「インプット資料」に基づいてミーティングを行い,「アウトプット資料」はどのようなものにするのか。これを決めることで,よりイメージがわきやすくなり,羅針盤のような役割を果たすことになる。例えば,先月の顧客クレームリストと前回の会議議事録をインプット資料にして次月の対策方法一覧をアウトプット資料にするなど |
6.役割分担 | プログラム(議題)を誰が主導し,誰が担当するのか。これを決めておかないと,具体的なアクションにつながらない。5人以上など参加人数が多い場合は,全員参加の意識付けにもつながる |
普段,ミーティングを主催する際に,この表のような内容を詳細に計画しているだろうか?恐らく「毎日のように開催しているミーティングのたびに,こんなに用意周到に準備することなんて不可能だ」という意見が大半だろう。
しかし,もしそうであればNHK,すなわちミーティングをなくす(N),ミーティングを減らす(H),ミーティングを変える(K)---ことを検討すべきだ。NHKでミーティングのあり方そのものを考え直すことで,本当に開催が必要なミーティングのみにフォーカスし,「とりあえずミーティング」を減らしていく必要がある。